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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (2)

  • 彼の二週間 - 傘をひらいて、空を

    彼は愉快そうな声音になり、覚えてないんだ、と言った。私は以前、彼から自転車をもらった。遠くまで乗れる、丈夫な自転車だ。悪くない製品だよと彼は言った。でも僕は自転車がとても楽しくなって、もっと速く走れるやつを買ったんだ。だからこれはあげる。 彼はその自転車に乗って私の家の最寄りの駅まで来て、電車で帰った。それからしばらく話をする機会がなく、一年ぶりに電話がかかってきたので、あのときはびっくりしたよと私は言った。だって相当な距離だものね、自力で走るなんてどうかしてると思った。そうしたら彼はちょっと笑ったような声で、覚えていないと言う。 私が適切なことばを見つけられないでいると、その日をふくむ二週間が僕の人生から抜け落ちたんだ、と彼は言った。今年の夏休みは海に行くんだというような口調で。 その夜、彼が携帯電話を見ると、「今日」と認識していた日から二週間が経っていた。彼は外してあった腕時計を手にと

    彼の二週間 - 傘をひらいて、空を
    inugamix
    inugamix 2010/07/23
    すばらしいなぁぁ
  • 傘をひらいて、空を

    仕事やめたんだあ。 友人が言う。皆が一斉に失業保険について質問する。もうやったか。自己都合退職でももらえる。手続きはこう、必要な書類はこう。 その場にいる全員が失業保険の申請をしたことがある、または申請方法を調べたことがあるのだから、就職氷河期世代とはせつないものである。資格職外資大学院入りなおし中途採用公務員、そんなのばかりである。 しかし、五十近くともなると職が落ち着き、転職がぐっと減った。だから仲間うちで仕事を辞めたという話が出るのは久しぶりなのである。 退職したという友人は、失業保険ねえ、とつぶやく。めんどくさい。 皆がいっせいに、もったいない、と言う。もらえもらえと言う。 しかし、よく考えればこの女には昔からそういうところがあるのだ。 彼女はふだんはパワフルだ。早くにできた子どもが二人いて、若くして配偶者を亡くし、親類や友人や、もちろん自分の能力と時間も含め、手持ちのリソースをフ

    傘をひらいて、空を
    inugamix
    inugamix 2010/04/29
    本にしたい
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