今の教科書にはよく、「戦前は天皇主権、戦後は国民主権」と書いてあります。これは「戦前は天皇のような独裁者がいて暗黒の社会だった。それが今の憲法によって明るい民主主義の世の中になった」との意味です。この意味での「天皇主権」「主権は天皇にあった」は事実としても法理としても完全な間違いです。 これとよく混同されるのですが、確かに戦前にも「主権は天皇にあるか否か」という大論争がありました。 主権は天皇にある派=穂積八束&上杉慎吉の正統学派、吉野作造。著作をよく読めば清水澄。 主権は天皇にない派=美濃部達吉。著作をよく読めば佐々木惣一。(主権は国家に?) この論争、美濃部の圧勝です。結局、主権を「現実の統治権は誰にあるか」に限定した定義に絞ったのが勝因です。現実に天皇は独裁者でも何でもない以上、穂積や上杉が権力のあり方を持ち出した以上、「では天皇は独裁者か」と美濃部に反論されて何も答えられなくなるの