組織のトップにして、最も革新的。新たな事業を起こしたベンチャー企業の社長のような話だが、長い伝統を誇る将棋の世界でも今、それが起きている。日本将棋連盟の会長を務める佐藤康光九段(52)が繰り出す見たこともない将棋は、ファンだけでなく将棋関係者たちの目を丸くし続けている。かつて通称「島研」と呼ばれる研究会で、ともに腕を磨いた島朗九段(58)から見ても「(忙しくて)研究時間もないはずなのに、思いつきがすごい」と驚きが隠れない。直近の対局で指された銀を進める構想は、周囲から「棒銀」ならぬ「暴銀」とも呼ばれたが、それも全ては向上心に由来するものだ。 【動画】佐藤康光九段の“暴銀”が出た一局 「暴銀」という言葉が生まれたのは、11月24日に行われた棋王戦挑戦者決定トーナメント、郷田真隆九段(50)との一局。後手番だった佐藤九段は、角交換の後に向かい飛車を採用した。ここまではいいが、振った側とは逆側の