ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (19)

  • 「正常な忘却」は決して悪いことではない──『忘却の効用: 「忘れること」で脳は何を得るのか』 - 基本読書

    忘却の効用: 「忘れること」で脳は何を得るのか 作者:スコット・A・スモール白揚社Amazon的に記憶力が良いことはこの社会を生き延びていくにあたって「良い」ことだとされている。記憶力を高めたいと思わない人がいるだろうか? 認知症でもないのに忘れっぽかったり覚えが悪かったりすると、心配されることもあるだろう。しかし、「忘却する」ことは脳にあらかじめ用意されている、とても有益な機能でもある。 書『忘却の効用』はコロンビア大学の神経精神科学教授であるスコット・モールが、忘却の利点について解説した一冊だ。記憶力が良い人、何もかも忘れない人(時折、そういう人がいるのだ)にも良い点はあるが、そうであるがゆえのデメリットも存在する。僕も人に呆れられるほど忘れっぽい方で、もう少し記憶力がよければなあと思う局面も多い(たとえばトークイベントで昔読んだの話をしようとしても全然内容を思い出せないと

    「正常な忘却」は決して悪いことではない──『忘却の効用: 「忘れること」で脳は何を得るのか』 - 基本読書
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    krswno1 2024/05/05
  • 第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作にして、刺さる人にはこれ以上なく深く刺さる物語──『ここはすべての夜明けまえ』 - 基本読書

    ここはすべての夜明けまえ 作者:間宮 改衣早川書房Amazonこの『ここはすべての夜明けまえ』は、第11回ハヤカワSFコンテストの特別賞を受賞したSF中篇(もしくは短めの長篇といえるかぐらい)だ。特別賞は長さが短めだったり一点突破の魅力があったりで受賞する作品が多いが(たとえば過去事例で代表的なのといえば草野原々の「最後にして最初のアイドル」など)、作も「刺さる人にはこれ以上なく深く刺さる」、2100年代を舞台にした、問題まみれの家族の物語だ。 とある理由からひらがなだらけの文章で物語が始まるので面らうのだが、設定開示の順番は心地よく、すぐに作中世界へと入り込んでいくことができる。単行になる前からゲラが配られたりSFマガジンに全文掲載されたりしていたのでエモいエモいと評判だけは聞いていたのだけど、実際に読んでみたらたしかにこれはエモーショナルな物語だ。しかし、ただ感動させよう、感動さ

    第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作にして、刺さる人にはこれ以上なく深く刺さる物語──『ここはすべての夜明けまえ』 - 基本読書
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    krswno1 2024/03/07
  • 韓国SFに多大な影響を与え、現代韓国で「最もSFらしいSFを書く」といわれる作家のSF短篇集──『どれほど似ているか』 - 基本読書

    どれほど似ているか 作者:キム・ボヨン河出書房新社Amazonこの『どれほど似ているか』は韓国の作家キム・ボヨンのSF短篇集である。「文藝」に掲載されたされた「赤ずきんのお嬢さん」や「SFマガジン」に掲載された「0と1の間」など断片的に作品が紹介されてきたが、一冊丸々の翻訳はおそらくこれが初。 ペ・ミョンフンの『タワー』、チャン・ガンミョンの『極めて私的な超能力』など近年翻訳される韓国SF短篇集の質は非常に高く、作にもかなり期待をしながら読み始めたが、これが既訳の韓国SF作品群に負けず劣らずおもしろい! (翻訳されてくる)韓国SFの特徴の一つは韓国社会の苦境や実際の事件などが作品に反映されていることが多い点にあり、作でもそうした面は多々あるのだが、超能力/能力バトルものからAIを扱ったミステリといった多彩な題材がそうした社会問題的なテーマと鮮やかに結びついている。池澤春菜さんの解説で、

    韓国SFに多大な影響を与え、現代韓国で「最もSFらしいSFを書く」といわれる作家のSF短篇集──『どれほど似ているか』 - 基本読書
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    krswno1 2023/06/06
  • 今年も早川書房1500作品が50%割引の超大型電子書籍セールがきたので、SF・ノンフィクション中心にオススメを紹介する - 基本読書

    早川書房の1500作品が最大50%割引という大型の電子書籍セールが来たので、僕が読了済みのものからオススメを紹介しよう。早川書房は定期的にセールをやるが、1500点級のセールを前回やったのは去年の6月頭なので、年に一回のセールとなる。これ以上安くなることはないと思われるので、この機会に買っておくといいだろう。 https://amzn.to/3n4rZ2Famzn.to 上が対象作品のリストになる。最初は、SFとノンフィクションを中心に、前回のセールには含まれていなかった新作&おもしろかったものを中心に紹介していこう。 まずは目玉商品といえるSF作品から プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 作者:アンディ ウィアー早川書房Amazonまずは目玉商品から行くが、なんといっても『火星の人』(映画版は『オデッセイ』)の著者であるアンディ・ウィアーによる『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(邦では

    今年も早川書房1500作品が50%割引の超大型電子書籍セールがきたので、SF・ノンフィクション中心にオススメを紹介する - 基本読書
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    krswno1 2022/06/23
  • 人間の脳が片方失われてもほぼ正常に機能するのはなぜなのか──『脳の地図を書き換える 神経科学の冒険』 - 基本読書

    脳の地図を書き換える: 神経科学の冒険 作者:デイヴィッド・イーグルマン,David Eagleman早川書房Amazonこの『脳の地図を書き換える』は、『あなたの知らない脳――意識は傍観者である』など一般向けの脳神経科学の著者として知られるデイヴィッド・イーグルマンの最新邦訳作である。彼はスタンフォード大学で「脳の可塑性」を教えている神経科学者で、書もその可塑性──脳が柔軟に変化していく能力──がテーマとなっている。 近年、脳には驚異的に変化していく力があることがわかってきた。たとえば複雑な道を隅々まで覚える必要があるロンドンのタクシー運転手は空間認識に関係する脳の海馬の容量が大きくなることがMRIでわかったが、それと同じことが、脳のあらゆる領域と能力にまたがって起こっているのだ。書が追求していくのは、そうした脳の可塑性の実態と、脳を超えて実社会に応用する可能性についてである。 デ

    人間の脳が片方失われてもほぼ正常に機能するのはなぜなのか──『脳の地図を書き換える 神経科学の冒険』 - 基本読書
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    krswno1 2022/06/11
  • 初心者から再読者まで、森博嗣の多様で自由な世界を示す10冊を紹介する! - 基本読書

    の雑誌に寄稿した「森博嗣の10冊」原稿を転載します。ちょこちょこブログ用に書き換えてます。あと、そんなにひねったラインナップにはなってないかと。強いていえば『スカイ・クロラ』が入ってないことぐらいかな。大好きな作品ですが、『ヴォイド〜』と迷ってこちらを選択しました。 はじめに 森博嗣は一九九六年にミステリィ作品『すべてがFになる』で第一回メフィスト賞を受賞してデビューし、その後破竹の勢いでシリーズ作品を刊行。デビュージャンルのミステリィの枠を超え、エッセイ、日記シリーズ、SF、幻想、絵、詩集、趣味の庭園鉄道やジャイロモノレールについて書かれたノンフィクションまで、数多のジャンル・テーマの作品を開拓し続けてきた。総作品数は文庫化などの重複を除いてさえも二〇〇を超える。そんな作家なので一〇冊の選定は困難を極めるのだが、今回はできるかぎり間口を広く、森博嗣の多様な側面を紹介してみたい。 ミス

    初心者から再読者まで、森博嗣の多様で自由な世界を示す10冊を紹介する! - 基本読書
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    krswno1 2022/03/07
  • 2021年に刊行され、おもしろかったノンフィクションを振り返る - 基本読書

    2021年も終わろうとしているので、今年刊行されたの中でも特におもしろかった・記憶に残ったノンフィクションを振り返っていこうかと。昨年に引き続き今年もの雑誌の新刊ノンフィクションガイドを担当していたので、冊数はノンフィクションだけで200冊ぐらいは(数えているわけではないけど)読んでいるはず。 とはいえ、無限にピックアップしても仕方ないので、10冊目安に紹介していこう。 まずは科学書から 彼らはどこにいるのか 地球外知的生命をめぐる最新科学 作者:キース・クーパー河出書房新社Amazon科学系のノンフィクションの中でも宇宙系から取り上げていくと、まず紹介したいのはキース・クーパーによる『彼らはどこにいるのか: 地球外知的生命をめぐる最新科学』。今年は中国最大のファーストコンタクトSF『三体』三部作が完結し、年末に邦訳が刊行されたアンディ・ウィアー最新作もファーストコンタクトSFの傑作で

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    krswno1 2021/12/22
  • 『火星の人』の著者最新作にして、宇宙SF&宇宙生物学SFの傑作長篇──『プロジェクト・ヘイル・メアリー』 - 基本読書

    プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 作者:アンディ ウィアー早川書房Amazonこの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、火星に一人取り残されてしまった男の決死のサバイブを描くハード・宇宙開発SF『火星の人』でデビュー&大ヒットした、(リドリー・スコットの映画も傑作だった)アンディ・ウィアーの最新作。国では売上も評価もよく、ビル・ゲイツの今年の5冊に選ばれ、映画化権も取得されライアン・ゴズリング主演の映画化も進行中など、すでにヒット・ロードに乗っている。 今回はすでに英語版での評判が漏れ伝わってきていたし、日での(版元の早川書房の)プロモーションも気合入っているな(翻訳SFとしては珍しい単行での刊行)と思っていたので最初から高まっていたのだが、読んでみればいやはやこれが期待通りの作品である。扱うテーマや題材、舞台そのものは『火星の人』と大きく異なっていて、新たな領域を開拓しているが(

    『火星の人』の著者最新作にして、宇宙SF&宇宙生物学SFの傑作長篇──『プロジェクト・ヘイル・メアリー』 - 基本読書
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    krswno1 2021/12/19
  • ヒューゴー、ネビュラ、ローカスと主要SF賞を総なめにした、エモーショナルな往復書簡時間SF──『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』 - 基本読書

    こうしてあなたたちは時間戦争に負ける (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:アマル・エル=モータル,マックス・グラッドストン早川書房Amazonこの『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』は、アマル・エル=モータル、マックス・グラッドスト二人の共作による、詩的な時間SFである。英語圏における小説の長さの基準的にはノヴェラ(中編)で、書も240ページほどとコンパクトだ。 エモエモ往復書簡時間SF 作がぱっと見で凄いのは、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、英国SF協会賞と賞的な評価が異様に高いところにある。賞の評価がどれほど高かろうが作品の中身の質の保証にはならないわけだけれども、それなりに期待して読み始めたら、これがたしかにおもしろかった。あらすじとしては、《エージェンシー》と《ガーデン》という二大勢力が時空の覇権をかけて争う──といった感じで、何の新鮮味もない。 だが、実際には

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    krswno1 2021/06/18
  • 早川書房の1500作品が50%割引の大型電子書籍セールがきたのでオススメを紹介する - 基本読書

    三体Ⅱ 黒暗森林(上) 作者:劉 慈欣早川書房Amazon早川書房の1500作品が最大50%割引という大型の電子書籍セールが来たので、僕が読了済みのものからオススメの作品を一部紹介してみよう。早川書房は定期的に電子書籍セールをやるが、前回の大規模なものは確か2020年3月頃の1000点セールだったので、セール対象は増えていることになる。なんと、先日完結したばかりの『三体』も、さすがに完結巻は対象ではないけれども第二部までがセール対象。 amzn.to まずはSFから紹介する。 三体 作者:劉 慈欣早川書房Amazonまずは早川といえばSFということで、SFから紹介してみよう。目を引くのはやっぱり『三体』である。先日三部作全体の紹介を書いたばかりだが、文化大革命からはじまり異種知性とのファースト・コンタクトが描かれる比較的現実路線の一巻。ファースト・コンタクト後、人類最高峰の知性が異種知性に

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    krswno1 2021/06/03
  • 10年代SF傑作選から『サハリン島』まで、多数の傑作SFが刊行されたてんこ盛りな2020年を振り返る - 基本読書

    アンソロジーが記憶に残った年 今年を振り返って記憶に残ったのは、やはり10年という区切りの年だったこともあってか優れたアンソロジーが多数刊行されたこと。たとえば、『なめらかな世界と、その敵』の伴名練が編者に入った『2010年代SF傑作選1・2』(大森望・伴名練編)は野崎まどの笑撃作「第五の地平」から小川一水による数学SFの傑作「アリスマ王の愛した魔物」、ベテランから新鋭まで幅広く取り揃えたアンソロジーだ。 2010年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF) 作者:ピーター トライアス,郝 景芳,アナリー ニューイッツ,ピーター ワッツ,サム・J ミラー,チャールズ ユウ,ケン リュウ,陳 楸帆,チャイナ ミエヴィル,カリン ティドベック,テッド チャン発売日: 2020/12/17メディア: 文庫今年は海外編も前回の年代別傑作選から十八年ぶりに『2000年代海外SF傑作選』、『2010年代海

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    krswno1 2021/01/10
  • 書評・感想記事の書き方について - 基本読書

    なんとなく、一度僕の書評・感想記事の書き方についてまとめておこうかと思った。先日下記のようなブログに関する記事を寄稿したところ、幾人かがこれに触発されてブログを書いてくれたようで、個人的に嬉しかったから、というのが大きい。 blog.hatenablog.com 書評(でも感想でもなんでもいいんだが)の書き方の正解を教えるとかそういうわけではなく、単純に僕がどうやって記事を書いているのか、書くときに何を考えているのか、ということの簡単なまとめである。人によって感想ブログといっても書き方は全然違うはずで、書き方の違いを見比べてみるのもおもしろいんじゃないか。 手順 当たり前だが一度通読する。その時点でブログに書くかどうかを検討して(書かないことも多い。あまりおもしろくないな、と思ったり、おもしろいと思ってもタイミングを逃すこともあるし、書きづらくてスルーしてしまうこともある)、載せる、となっ

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    krswno1 2021/01/05
  • 2020年に刊行され、おもしろかったノンフィクションを振り返る - 基本読書

    2020年ももうすぐ終わるので、読んでおもしろかったノンフィクションを振り返っていこうかと。今年はまるっとの雑誌でノンフィクションの新刊ガイドを担当しており、例年よりもたくさん読んだような、あまり変わらないような。とはいえ、おもしろいノンフィクションには山ほど出会ったので、思い出しながら書いていく。 まずは科学系から! LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界 作者:デビッド・A・シンクレア,マシュー・D・ラプラント発売日: 2020/09/01メディア: Kindle版科学系のノンフィクションの中で最もおもしろかったのはなにかといえば、デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラントによる『LIFESPAN 老いなき世界』になる。シンクレアは老化の原因と若返りの方法に関する世界的な権威で、老化は克服できる病であり、克服すべきだ、とこのの中で強烈に主張している。ほとんどすべての

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    krswno1 2020/12/17
  • あり得たかもしれない宇宙開発史を描き出す、主要SF賞総なめの話題作──『宇宙へ』 - 基本読書

    宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF) 作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版この『宇宙(そら)へ』は、メアリ・ロビネット・コワルによる、1950年代の女性の計算者&パイロットの物語を描き出す、宇宙開発系のSFである。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞というアメリカの主要SF関連賞を総なめにした、SFにおける今年最大の話題作のひとつ。僕はそもそも、SFとしては現実的な科学に根ざして宇宙を舞台に展開する物語、宇宙開発系と言われるサブジャンル全般が特に好きだから、作にも大いに期待していたんだけど──いやーこれはおもしろかった! 主な舞台となっているのは先に書いたように1950年代のアメリカだが、この世界は我々の

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    krswno1 2020/08/21
  • 孤独な少女の人生を描く、全米500万部の話題に劣らぬ内容を伴った超ベストセラー──『ザリガニの鳴くところ』 - 基本読書

    ザリガニの鳴くところ 作者:ディーリア・オーエンズ発売日: 2020/03/05メディア: 単行(ソフトカバー)この『ザリガニの鳴くところ』は著者ディーリア・オーエンズが70歳になってはじめて執筆小説であると同時に、またたく間に全米500万部、2019年のアメリカでもっとも売れた作品となった、湿地の少女を描く文学・ミステリィ小説である。 正直言って売上がどれだけ凄かろうがまったくおもしろみを感じない、というケースは往々にしてあるわけで、売上がなんぼのもんじゃい!! と(売上何万部と帯とかに書いてあるについては)謎の気炎を上げながら読むのだが、作に関してはよくもまあこんな作品がそんだけ売れてくれたなあ、と感謝をしたくなるようなである。端的にいって、とても美しく残酷な風景が描かれていて、とてつもなくおもしろい。 湿地で一人孤独に住まう少女の人生を追いながら、そこで起こった殺人事件の犯人

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  • 『三体』の劉慈欣が「近未来SF小説の頂点」とまで言った、ページをめくる手が止まらない圧巻の中国SF──『荒潮』 - 基本読書

    荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:陳 楸帆発売日: 2020/01/23メディア: 新書この『荒潮』は中国のSF作家を代表する一人と言われる陳楸帆による初の(そして今のところ唯一の)長篇SF小説である。陳楸帆の小説は、日でも刊行された現代中国SFアンソロジーである『折りたたみ北京』にも短篇「鼠年」が載っている。 この「鼠年」は、中国で遺伝子改造されたラットの逃亡と、その駆除隊に入った底辺層の駆除隊の青年を通して中国社会の苦境と世界を支配するゲーム・ルールを描き出していく、ローカル性とグローバル性が適度にブレンドされ、そこからさらにSFならではの情景に繋がっていく圧巻の短篇で、アンソロジー全体の中でも群を抜いておもしろかった。また、この『荒潮』は英語や、原語で読んだ人の評判もずば抜けて高く、最初から期待していたのだが──、実際読んでみたらこれがもうめちゃくちゃおもしろい! 久し

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    krswno1 2020/02/02
  • 世界に対する認識そのものが問われる、SF密室ミステリィ──『世界樹の棺』 - 基本読書

    世界樹の棺 (星海社FICTIONS) 作者:筒城 灯士郎,淵゛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/11/17メディア: 単行(ソフトカバー)この『世界樹の館』は、『ビアンカ・オーバーステップ』という作品で衝撃のデビューを飾った筒城灯士郎の最新作である。ビアンカの何が衝撃のデビューだったのかというと、もともと筒井康隆がはじめてライトノベルを書いたという触れ込みの『ビアンカ・オーバースタディ』という作品があった。筒城灯士郎はその続篇を勝手に書いて新人賞に応募してきて、権利面などの困難さはあるものの、それをはねのけるだけのパワーを持った作品であったためにデビューに至ったという経緯があるのである。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp で、実際『ビアンカ〜』って、コメディからシリアスまで縦横無尽にこなし、メタ・パラフィクションであり、能力バトルであり異世界物であり

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    krswno1 2019/12/01
  • 科学的で現代的な「人を動かす」──『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』 - 基本読書

    事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学 作者: ターリシャーロット,上原直子出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2019/08/11メディア: 単行この商品を含むブログを見る事実では人の行動は変わらないという。議論をしたときに「これこれこういう事実がある」という主張をしても相手の意見が変えられなかった、ということは多かれ少なかれみな体験しているものではないだろうか。たとえば、アメリカではワクチンを摂取することで知的障害などが発生するリスクがあるというデマが拡散して、そのせいで百日咳やおたふく風邪が今更蔓延するというアホくさい状況が発生している。 ワクチンによって知的障害リスクが上がるのは完全にデマなので、科学的な事実の啓蒙を行えばいいでしょ、と思うかもしれないが、実はこれには全然効果がないのである。ある実験では反ワクチン思想を持つ親を集め、麻疹にかかった子どもの痛まし

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    krswno1 2019/10/13
  • 初心者向けのオススメSF記事を書きました&補足アフタートーク - 基本読書

    今日「それどこ」に初心者向けのSFについて寄稿したので、こちらではその補足というかアフタートークでも。そもそも「初心者向けのSF」ってなんやねんという話でもしながら、取り上げられなかった/取り上げたかったの話でもしようかと。 srdk.rakuten.jp 取り上げたは五冊あるが(リンク先参照)「これこそが初心者向けのSFだオラーテメーらに教えてやるぜー!」的なノリでいくと普通に荒れるので、今回は「僕はこういうSFを読んでSFの沼にズブズブハマっていきましたよ」と逃げの入った選定となった。記事の対象読者としてはSFこれまで意識しては一冊も読んだことないな〜という人たちで、短篇集は一冊入れてー恋愛ものも(打ち合わせの時に要望があったので)入れてー雪風は(自分がそれをきっかけに読み始めたので)入れてー、あとはハードSFも一つは入れてー、そりゃ飛浩隆は入れるでしょーという感じで決めた。 あと

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    krswno1 2018/05/16
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