「民族と国家」講義資料1 「人種」概念と人種差別 [2010年04月改訂] はじめに. "race" と「人種」 ユネスコ等で用いられる "race" と、日本における「人種」では、その実体的な意味が異なる。 "race" は、人間集団あるいは個人について、身体的形質を主たる要素とはするが、それに加えて言語、宗教、出自など、文化的・社会的要素をも包含する言わば「種類」と訳すべき概念である。 これに対し、日本で用いられる「人種」は異常なまでに身体的形質ないしは「血筋」に限定された概念であることが特徴的である。 ここでは、身体的形質を中心とする "race" 概念の発生と近・現代における変容を[1]、日本における「人種」概念の問題点を[2]として述べる。 [1] "race" 概念の変容 1.集団的な「同質ー異質」認識は古くから存在したが、古代文明においても中世ヨーロッパ、イスラム世界に