矛盾した人間は、イデオロギーに還元できない 杉田俊介(以下、杉田):今年、『安彦良和の戦争と平和 ガンダム、マンガ、日本』という本を刊行して、中島さんにも読んでいただきました。まずは率直な感想を聞かせてください。 中島岳志(以下、中島):私にとって、安彦良和さんは1つの像によってはっきりと捉えきれないところがあったので、面白く読ませていただきました。 最初に読んだのは、中国東北部に存在した満洲国について描いたマンガ『虹色のトロツキー』で、大学生のときでした。アジア主義や超国家主義に関心を持っていましたので、それはどんぴしゃのタイミングでしたね。 次に読んだのが『王道の狗』でした。とくに金玉均(朝鮮李朝末期の政治家)が、どんなふうに描かれているのか関心がありました。 杉田:その当時、安彦さんについてはどんな印象を持ちましたか。 中島:そのとき、私は安彦さんが『機動戦士ガンダム』に関わりのある