書庫の整理をしていたら、整形外科の教科書の間から一枚の写真が出てきた。22歳の頃に大学病院で撮った写真である。今の私から比べれば若々しい、しかしくたびれたポロシャツを身につけた“彼”は、いかにも無邪気な顔でカメラに向かって微笑んでいた。 無邪気な、という表現を私は用いた。しかしそれは適切ではないかもしれない。確かに“彼”の顔からは、現在の私が帯びているある種の邪悪さを感じ取ることは出来ない。一方で、22歳の“彼”の表情には、どこかピンぼけしたような、何を表出しているのか分からないような、曖昧さが漂っていた。 22歳という歳を考えれば、顔面表情筋の発達は望むべくもないだろう。そういった顔の年輪は、最低でももう数年は待たなければ浮かんで来まい。しかし学生時代の自分がどんな表情を表出していたのか・カメラに対してや他人に対して表情レベルでメッセージを伝達する術を身につけていたのかを思い出すと、22