新型コロナウイルスが猛威を振るうようになってから、たくさんの変化があった。一番は自分の心の変化である。私は群馬の生まれなのだが、最近の東京が群馬に思えて仕方がないのである。 私にとっての東京とは、混沌としていて自由で、昼と夜の時間の境目も曖昧な、鍵を持たない番人のようなものだった。誰かの叫びが聞こえたって、誰かが野垂れ死にそうだって、無関係かのような顔をして、それでも町は廻っていた。「人に触れてはいけない」という誓いが破られるしかない満員電車の息苦しさが好きだった。寄り道や家出をしたくなって飛び出した先の見知らぬ小道では、ちゃんと誰かの細々としていて時には大胆な息づかいが聞こえた。どこか見渡せば必ず明かりは点いていて、その扉を開けば、独りぼっちにならずに済んだ。そりゃもう勝手にそう思っていた。なのに最近は違うのだ。帰路、空いている店はない。雑踏にまぎれることができない。無茶ができないし、し