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ブックマーク / amberfeb.hatenablog.com (9)

  • 退屈な「まぼろし」、その可能性の中心────『アリスとテレスのまぼろし工場』感想 - 宇宙、日本、練馬

    『アリスとテレスのまぼろし工場』をみました。いや、すごいですね。以下感想。物語上の重大な仕掛けに触れています。 日列島、海と山とに囲まれた小さな街、 見伏。街の産業の中心ともいえる製鉄所での大きな事故以来、そこでは誰も街の外に出ることはできず、永遠の冬が続き、子どもたちの成長も止まっていた。終わりない日常が続くなかで、人々は倦み疲れ、中学生たちはしばしば刹那的な快・不快に身をゆだね無限に続くかと思われる時を過ごしていた。 中性的な容姿をもつ中学生の少年、菊入正宗は、「気になる」存在である同級生、佐上睦実によって、不可思議な力で稼働を続ける製鉄所の内部に誘われる。そこには睦実の面影を感じさせる、幼い少女がいた。幼児のような振舞いをするこの少女はいかなる存在なのか、そして終わらない日常に終わりは訪れるのか。少女・少年たちが対峙する、この世界の終わり。 『さよならの朝に約束の花をかざろう』に続

    退屈な「まぼろし」、その可能性の中心────『アリスとテレスのまぼろし工場』感想 - 宇宙、日本、練馬
  • 暴力と活劇のさきに——『ガンダム Gのレコンギスタ』感想 - 宇宙、日本、練馬

    ガンダム Gのレコンギスタ』をようやくみました。どうやら劇場版を見に行くタイミングを逸してしまった感があり、やや残念です...。以下、感想。 はるか遠い未来。地球に住む人々は、軌道エレベーターにより宇宙からもたらされる超技術によって生存していた。もはやその由来すら定かでない軌道エレベーターは神聖視され、技術の発展は禁忌とされる一方で、各国はロストテクノロジーをもとに巨大人型ロボット=モビルスーツに代表される軍備の拡大をすすめ不穏な気配も漂う。そんな折、宇宙より飛来した、新型モビルスーツ、Gセルフをめぐって、軌道エレベーター周辺で軍事衝突が起こる。その動乱が、地球帰還をめざす宇宙勢力による運動、レコンギスタの端緒になると、まだ誰も気付いていなかった。 富野由悠季総監督による、「リギルド・センチュリー」を舞台にした新たなるガンダム。2014年から翌15年にかけてTV放映されたのち、劇場版5部

    暴力と活劇のさきに——『ガンダム Gのレコンギスタ』感想 - 宇宙、日本、練馬
  • 涙の川は絶えず流れる――『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』感想 - 宇宙、日本、練馬

    『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』をみました。以下、感想。 水。流れる水。それはどうやら川であるとわかる。寒々しい空気。川には橋が架かっている。橋の上に立つ若い女と男。告げられる好意。驚きの声。新たな物語の始まり。 『響け!ユーフォニアム』シリーズの最新作は、テレビシリーズの直後、黄前久美子たちが2年生になり、新たな部員たちとともに吹奏楽部の活動に打ち込むさまを描く。『リズと青い鳥』で切り取られた出来事と、時間軸的には重なり、『リズと青い鳥』の出来事を想起させる諸々の場面は散りばめられ、クライマックスではその記憶を強烈に引き出されるのだが、それでもこの『誓いのフィナーレ』はあくまでテレビシリーズの続編、という感触が(キャラクターデザインから一目瞭然ではあるのだが)、強い。 新入生の入部、おきまりのイベント、残酷なオーディション、そして全てを賭けて臨む、大会の舞台。それらは

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  • フィクションの世界と素朴な祈り――『天気の子』感想 - 宇宙、日本、練馬

    天気の子』をみました。新海誠という作家は、これからもますます果敢に自分自身を更新していくのだろうな、と感じさせる傑作だったと思います。以下、感想。ネタバレが含まれます。 雨の降りしきる東京、新宿。病室から外を眺める少女。不意に差し込む光。その光に誘われ、少女は不可思議な力を手にする。 孤島を旅立ち、東京へ向かう少年。船中で偶然出会ったオカルトライターに拾われた少年は、おしつけられた雑用を処理する中で、「晴れ女」の噂を耳にする。「100パーセントの晴れ女」である少女と少年は出会う。そして彼女は、あるいは彼は、世界を変えてしまう。他ならない彼女のために。 新海誠の最新作は、雨の降り続ける東京、おもに新宿界隈を舞台に、意志することで天候を操作し、雨の世界に陽ざしをもたらす少女をめぐる物語が語られる。新海誠のフィルモグラフィから雨の記憶を探っていけば、当然、『言の葉の庭』にたどりつく。『言の葉の

    フィクションの世界と素朴な祈り――『天気の子』感想 - 宇宙、日本、練馬
  • 彼女と彼女の街――『たまこまーけっと』感想 - 宇宙、日本、練馬

    『たまこまーけっと』をみました。ありがとうと言いたい。感想書くのも野暮なのではというくらいに尊い気持ちなのですが、以下適当に感想を。 世界の中心は屋の娘 現代日のとある商店街。そこに彼女はいた。屋の娘、北白川たまこはそのうさぎ山商店街で、生まれ、育ち、生きている。そんな彼女のもとに異国からの訪問者が現れて、ある一年は始まりを告げるのだった。 『たまこまーけっと』が映し取る世界は、徹頭徹尾北白川たまこという一人のヒロインを中心点として編成されていて、それゆえ、彼女はこれ以上なく魅力的な存在として世界の中に屹立する。彼女が魅力的なのは、単にかわいらしい容姿をしているとか、魅力的な声としゃべり方をするとか、仕草からにじみ出るあいくるしさとか、悪意というものはこの世にないのではないかと信じたくなるようなパーソナリティとか、そんなことではなく*1、世界の中心に彼女がいることからくる。それが『た

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  • 「特別であること」の二つの意味――アニメ『氷菓』を貫く問題系として - 宇宙、日本、練馬

    アニメ『氷菓』について、全体を「特別/普通」という軸が貫いているんじゃないかなみたいなことをぼんやり考えていて、考えています。とりあえず今頭に浮かんでいることをメモ的に。 「君は特別」という祝福、もしくは呪い 「特別/普通」という対立軸は、多分、「薔薇色/灰色」とも言い換えられるし、以前僕は「持てる者/持たざる者」という言葉でそれを言い表せるんじゃないか、みたいに考えてもいました。 amberfeb.hatenablog.com それに類するモチーフは探せばいくらでも見つかるんじゃないかという気もするのだけど、作中の言葉を借り受けるならばやっぱり、「特別/普通」というのがふさわしい、と思う。それは作中で「特別」という言葉に特別な重みが付与されている、という印象を受けるから。 「特別/普通」の対立軸は「氷菓」編においてもみられて、『氷菓』の由来をめぐる物語は「特別」だった男、いや「普通」の人

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  • たとえ届かなくても、それでも「優しさの理由」が知りたい――アニメ『氷菓』における「謎」の位相 - 宇宙、日本、練馬

    昨日、といか今日の未明、Twitter上で小鳥遊@g_fukurowlさんと『氷菓』についてひと盛り上がりしまして。それでちょっと思うところがあり、アニメ『氷菓』について思うところを書き留めておきたいと思います。chouchoの歌う第一期のオープニング曲から借りた「優しさの理由」をひとつのとっかかりとして。 折木と「優しさの理由」―「成長」のひとつの座標として 「優しさの理由」をキーワードとして、アニメ『氷菓』を要約するならば、折木奉太郎が、「優しさの理由が知りたい」、そう思えるようになるまでの物語である、と言ってもいいと僕は思っています。 下の記事では、そのことを「「他者」たちの方へ足を踏み出した」と表現したんですが、それよりは、「優しさの理由が知りたい」、そう思うようになった、と表現するほうがよりクリアで適切なんじゃなかろうかと思うわけです。 奉太郎が変わっていく、言い換えればある意味

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  • 折木奉太郎の死角――アニメ『氷菓』「愚者のエンドロール」編感想 - 宇宙、日本、練馬

    夏なので『氷菓』、「愚者のエンドロール」編が見直したくなり、みていました。確かな良さがあった。せっかくなので適当に感想を書き留めておこうと思います。 折木奉太郎の死角 ある夏の日。千反田えるにつれられて、文化祭で上映されるという映画の試写会に向かった古典部の面々は、未完の映画というひとつの「謎」と対面する。その未だ書かれざるミステリー映画の結末を巡る物語が展開されるのが、「愚者のエンドロール」編というわけだ。 「愚者のエンドロール」編を端的に要約するならば、折木奉太郎が謎を取り逃がす物語だ、ということができるだろう。折木は推理によって一つの結論を導き出すものの、来彼が掴もうとしていた脚担当の郷真由の意図を取り逃がし、まったく別の物語を創作して/させられてしまう。 それには様々な要因が考えられる。とりわけ、折木に狙いを定めて「推理作家」を演じさせようとした「女帝」入須冬実の巧みな誘導は

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  • 折木奉太郎と千反田えるの未来について――『氷菓』についての論点整理 - 宇宙、日本、練馬

    先日、小鳥遊@g_fukurowlさんと『氷菓』についてお話しする機会があり、大変刺激を受けました。それから特に考えがまとまったというわけではないのですが、多分、今年度も僕は懲りもせず『氷菓』とか青春とかについて書き散らかしていくのだろうなと思うので、一応今のところの考えを書き留めておこうと思います。 遠まわりする雛は、どれほど近づけたのか?―「22話 遠まわりする雛」のラストについて アニメ『氷菓』を見終えた誰もが思いをはせずにいられないのは、折木君と千反田さんのその後だと思うわけです。はっきりとは語られない不確定な未来だからこそ。 それについては以前に小鳥遊@g_fukurowlさんの示唆を受けてこんな文章を書いたりしました。 amberfeb.hatenablog.com ここで彼らの未来はラストショットの象徴する瞬間がすべてであり、彼と彼女が「優しさの理由」を知りたい、と思ったこと

    折木奉太郎と千反田えるの未来について――『氷菓』についての論点整理 - 宇宙、日本、練馬
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