幼い頃は悲しい思い出ばかりだった。 テーブルの上に置かれたコイン、「これで何か食べなさい」と書かれたメモ、一人ぽっちの食事……。 栃木県栃木市の建設会社「大伸ワークサポート」社長・広瀬伸恵さん(42)は、ツラい幼少期を過ごしてきた。学校から帰ってくると、親はいつもケンカ。両親とも家を空けることもしばしば。一人では家に居場所がなく、寂しさを紛らわすために非行に走ったーー。 だが、今は違う。 「マミー! ご飯よそってよ」 「うるさい! 自分でよそいな。甘えるんじゃない!」 騒がしいほど賑やかな食卓。広瀬さんは、自宅敷地内の寮に住む社員たちへ、母親代わりに毎晩夕飯をふるまう。広瀬さんが幼い頃憧れていた、笑い声が絶えない食卓だ。 だが……フツウの会社と違うところがある。社員36人中、約9割の32人が刑務所や少年院の服役経験者。広瀬さん自身「魔羅亜(まりあ)」という女性だけの暴走族の総長を務め、三度