人間行動のバイアスとナッジ ダイエット、運動、資産形成、禁煙、部屋の片づけなど、日ごろからやりたいと思っているのになかなか着手できないことはないだろうか。自らが合理的だと考える行動であっても、人間は、実際にはなかなかそれができないことを、行動経済学は明らかにしてきた。 そうした人間行動に関するさまざまな「バイアス」を前提にして、人々により良い選択を促していくのが「ナッジ(nudge)」であり、米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授と米ハーバード大学のキャス・サンスティーン教授が2008年に出版した著書の中で提唱した考え方である。ナッジとは本来、「肘でつつく」という意味だが、転じて、人間の性質に配慮しながらより良い選択を促すという意味で使われている。 政策の場で活用されるナッジは、個人の意思決定の自由を尊重しながら、少ない財政コストでより良い選択を促すツールである。補助金、税制、規制・ルール