「ウクライナの英雄」になった男の試練 ロシア軍の侵攻が始まって以降、ほぼ毎日のように、お決まりのオリーブ色の装いで、ウクライナ国民に向けた演説を収録してきたウォロディミル・ゼレンスキー大統領。最近はその演説のなかに、これから起こるであろうさらなる困難への警告も含まれるようになった。 3月31日夜、街灯を背にしたゼレンスキーはこう語った。 「私たちは皆、等しく勝利を望んでいますが、この先には戦いが待っています。私たちが目指しているものをすべて手に入れるには、まだ困難な道のりがあるのです」 その最も困難な道のりのなかには、ゼレンスキー自身が直面しているものもある。 コメディアン上がりの44歳の大統領は政治の初心者と見なされ、ロシアの脅威が迫るなか、ウクライナ国民や欧米の首脳らは彼の手腕に懐疑的だった。ところが、いざ戦争が始まると、その勇気で国内外の人々を鼓舞し、ウクライナの歴史に名を刻む指導者