もともとロボットを作ってみたかった私は工学系に進み、晴れてロボットの研究室に配属された。研究テーマは触れずに硬さを測るセンサー。測りたいものに空気を吹き付け、そのときの変形の大きさで硬さを測る。硬さで肌年齢を測るなんてこともやっていた。 博士課程も残すところ1年となったころ、東京の研究所で作られた再生医療に使われるというシート状の細胞組織の硬さを測ってみようということになった。しかし、皮膚ではうまくいっても、タマネギの薄皮ほどの厚さしかない細胞組織では変形がとらえられず、うまくいかなかった。ただ、空気を吹き付けたときに細胞組織を覆う培養液が弾かれる様子が、モノによってずいぶん違うなあと感じていた。 その後、先方の研究所に博士研究員として在籍し、細胞培養や特定のタンパク質を観察する技術などを身につけて、この現象の解明に取り組んだ。通常の培養条件に比べて、栄養素が少ない条件では細胞組織表面にあ