『ヒトラーの描いた薔薇 (ハヤカワ文庫SF)』 ハーラン・エリスン,川名潤,伊藤典夫,小尾芙佐,深町眞理子 早川書房 1,100円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto エリスンの邦訳短篇集はこれで三冊目。一冊目の『世界の中心で愛を叫んだけもの』から二冊目の『死の鳥』(→2016年8月書評)刊行までじつに四十三年もかかったのに、三冊目の本書は一年も経たずの刊行だ。じつは雑誌に訳出されたまま埋もれていた作品がかなりあり、それが蔵出しされたのである。『死の鳥』によってエリスンへの注目が集まっていただけに、絶好のタイミングといえよう。 凝った表現と複雑な構成の作品が多かった『死の鳥』に比べると、『ヒトラーの描いた薔薇』はストレートな作品が多い。とはいえ、エリスンの作品なので、発想やガジェットではなく、情念や表現の強度で読者を引きこむ。 表題作の
1962年10月16日、ソ連が密かに核ミサイルをキューバに設置していることを発見したアメリカ大統領ケネディは、ソ連首相フルシチョフにミサイルの撤去を迫り、拒否された。この日からフルシチョフがミサイル撤去の決断を下すまでの13日間ほどに、人類が核兵器による全面戦争に近づいたことはない。キューバ危機で核ミサイルが攻撃に用いられることはなかったが、実はこの危機の最中に核ミサイルは4発も爆発していた。その事実が世間に知られることがなかったのは、この爆発が宇宙空間で行われていたからだ。 4発中2発はアメリカによって、残りの2発はソ連によって行われた実験だった。わざわざ宇宙空間で核爆発させたのは、クリストフィロス効果を研究するため。1957年にソ連が打ち上げた人工衛星によるスプートニク・ショック以来、アメリカはソ連のICBM(大陸間弾道ミサイル)から自国を守る方法を探し続けていた。そして、無名の科学者
Web小説サイト「カクヨム」にて連載されている「The video game with no name」が書籍化されると明らかになっています。 「The video game with no name」は、赤野工作氏が手がけるSF小説。文章が掲載されている場所は“2115年4月に開設されたレトロゲームレビューサイト”という設定になっており、レビューをするという形で未来のゲームを紹介しつつ、さらになぜ低評価になってしまったのかという点を物語のように解説しています。 新型VRマシンで美少女のいる世界に入れるものの酔いすぎてしまう『キミにキュン!人工ヒメゴコロ』に始まり、2052年から運用が開始されたものの結果的に怪談話になってしまったスマートレンズAR事業の「福井県鯖江市」、大衆を洗脳しようとした恐怖のRPG『スシャマ・ドゥーシャマー』、そして寂しいゲームマニアと一緒にゲームを遊ぶため開発され
『ぼくが死んだ日 (創元推理文庫)』 キャンデス・フレミング,三辺 律子 東京創元社 990円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto シカゴ郊外。両側から森が迫る、細く、舗装されていない道路の先に、その墓地はあった。十代の子どもばかりが眠る〈ホワイト墓地〉。錬鉄製の高い柵で囲まれているが、ところどころ櫛の歯が欠けたようになっており、門は長い年月を経てたわみ、開きっぱなしになっている。参るひとも途絶えているのだろう。そこかしこに雑草が生えている。 うちすてられた場所。 大人になる前に死に、忘れられたままになっている者たち。 その少年少女が、それぞれの最期について語りだす。聞き手は、この墓地へ誘われた青年マイク・コワルスキだ。マイクは十六歳。葬られている者たちと変わらない。 真夜中の墓地。生者はマイクただひとり。 なんて魅力的な舞台設定、ぞく
『FUNGI-菌類小説選集 第Iコロニー(ele-king books)』 オリン・グレイ,シルヴィア・モレーノ=ガルシア,飯沢耕太郎,野村芳夫 Pヴァイン 1,760円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto キノコをテーマにしたアンソロジーとは、またニッチな企画を考えついたものだ。しかも、そのきっかけは、本多猪四郎監督の特撮ホラー映画『マタンゴ』(1963)だというから嬉しくなる。『マタンゴ』の原作はウィリアム・ホープ・ホジスンの短篇「夜の声」なので、イギリス(ホジスン)→日本(本多)→北米(このアンソロジー)と、怪奇キノコの胞子が伝播したわけだ。 原書はInnsmouth Free Pressというカナダの小出版社から上梓された。社名に「インスマス」を冠していることからもわかるように、怪奇小説を中心とした出版活動をおこなっている。本書
あらすじ 「私、爆弾なんです」 ある日、空から降ってきたのは、高校時代に気になっていたクラスの女の子とそっくりな自称“新型爆弾”で……。 映像化もされた表題作をはじめ、「記憶が退行する風邪に罹った幼なじみ」「蘇った死者」「図書館に棲む小さな神様」などなど、“すこしフシギな女の子”と“フツーの男の子”のボーイ・ミーツ・ガール短編集。 10年以上の時を超えて、奇才・古橋秀之がおくる不朽の名作が、書き下ろし短編を加えて復刊!
『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)』 宮澤 伊織,shirakaba 早川書房 858円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto いっぷう変わった非日常サバイバル小説。個々の要素だけを取りだせば、先行作品はいくらでもあるが、その組み合わせかたがユニークだ。 主人公はふたりの女子大生、紙越空魚(かみこしそらを)と仁科鳥子(にしなとりこ)。彼女たちは〈裏側〉の世界で出会った。 空魚は閉塞した日常に息苦しさを感じており、ひとりで心霊スポットを探索していたが、その過程で偶然に〈裏側〉へ入る方法を発見した。いっぽう、鳥子は行方不明になった友人、冴月(さつき)を探すため、これまで幾度となく〈裏側〉を訪れていた。彼女はもともと冴月の導きによって〈裏側〉を知ったのだ。 〈裏側〉は人知が及ばぬ存在が何種類も徘徊する危険いっぱい
デジタル着色した鎌形赤血球の走査型電子顕微鏡写真。BSIP提供(撮影日不明。資料写真)。(c)BSIP 【3月3日 AFP】遺伝性の血液疾患「鎌状赤血球症(SCD)」を患う10代少年の症状緩和に、遺伝子治療を用いて世界で初めて成功したとする画期的な研究結果が2日、発表された。 遺伝子変異が原因のSCDを発症すると、赤血球の形状が通常のドーナツに似た形でなく、鎌型や三日月型を呈するようになる。 世界に約500万人存在するSCD患者は、貧血や疲れやすいなどの症状を示す場合が多く、感染症や脳卒中のリスクが高くなるほか、激しい体の痛みの発作に見舞われる。患者の多くは、長期にわたる輸血を行う必要がある。 だが今回、仏パリ公立病院連合(AP-HP)、仏イマジン遺伝性疾患研究所(Imagine Institute of Genetic Diseases)、遺伝子治療開発企業の米ブルーバード・バイオ(bl
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