2023.12.30 18:00 「ガウェインの結婚」を歴史の授業で使わないで!~中世の英文学と女性がもっとも望むこと 2年ほど前に「世界史講義録」というウェブサイトの「最初の授業」という記事がバズったことがありました。これは高校世界史の授業初回で、アーサー王伝説の「ガウェインの結婚」をとりあげ、歴史は面白い……というような話の枕にするというものです。 詳しくはリンク先の元記事を読んでいただきたいのですが、非常にざっくり説明すると、アーサー王が敵の騎士から「すべての女性がもっとも望むことは何か」という問いを出され、それの答えが「自分の意志を持つこと」だったという話をネタに、「700年から500年くらい前の時代につくられた物語」なのに既に女性の人権に関係するようなトピックを取り扱っていて現代的だ……という内容です。 このウェブサイトの講義は、2009年発行の竹田青嗣『中学生からの哲学「超」入
大江健三郎の「政治少年死す(「セヴンティーン」第二部)」は、1961年『文學界』2月号に掲載されたが、右翼の抗議にあい、出版社側が謝罪したため、2018年7月に『大江健三郎全小説3』に収録されるまで、長らく単行本未収録の封印作品となっていた。 実は、鹿砦社から出た『スキャンダル大戦争2』という本に、深沢七郎の「風流夢譚」と一緒に無断で収録されていて、俺もそれを持っていたのだが、雑誌からのコピーをそのまま掲載しているので文字がかすれていて読みにくいうえ、いつでも読めるからという安心感から、長らく放置していたのだが、フォロワーがリツイートした下の大塚英志のツイートがきっかけで、再度興味を持つことになった。 大江健三郎が「政治少年死す」で引用している藤森安和の詩集「15才の異常者」。持ってたはずが発掘できす古本屋から取り寄せた。坂本龍一がラジオで突然朗読したりしたんじゃなかったか? pic.tw
著名人が自ら、ヤクザの子であると明かすことは珍しい。まして、それが文学者となればなおさらだ。その証言をもとに父親の足跡を追った、暴力団取材の第一人者による渾身のレポートである。フリーライターの鈴木智彦氏がレポートする。(文中敬称略)【前後編の前編】 * * * SNSを通じ、詩人の伊藤比呂美から連絡があったのは令和3年8月だった。 「父のことを調べて『サカナとヤクザ』にたどりつきました。高橋寅松は伯父にあたります。父はその代貸であった伊藤一彦というものです」(DMより抜粋) 「高橋寅松」と「伊藤一彦」は、拙著『サカナとヤクザ』(小学館刊)の第四章『暴力の港・銚子の支配者、高寅』に登場する博徒の貸元と幹部である。代貸という役職は「貸元の代理」という意味で、博奕を開帳する貸元から全権委任される現場責任者だ。組織ではナンバー2で、現代暴力団でいう若頭や理事長に当たる。 日本有数の漁港である千葉県
Kenzaburo Oe, a Nobel laureate whose intense novels and defiant politics challenged a modern Japanese culture that he found morally vacant and dangerously tilted toward the same mind-set that led to catastrophe in World War II, died on March 3. He was 88. His publisher, Kodansha, announced the death on Monday. It did not specify a cause or say where he had died. Mr. Oe (pronounced OH-ay) was award
1.大正時代の社会不安と宗教・内省ブーム ●効率重視の教養は、今に始まったことなのか? 毎月、現代を切り取るテーマを扱う雑誌『中央公論』。本書が2023年1月――つまり今年の新年号に掲げたテーマは、これだった。 特集「効率重視の教養は本物か」 インターネットが普及して以来、情報収集やコンテンツ受容のあり方は様変わりしている。SNSや動画などを駆使することで手軽に知識が得られるメリットは大きいが、他方でそこに落とし穴はないだろうか。 従来の教養とは異なる価値観の台頭について、多様な立場から考えてみたい。 (『中央公論』2023年1月) 書籍や雑誌の時代から、インターネットの時代を経て、現在「効率重視の教養」が台頭している――そのような主張をなす特集だ。 これは本連載の第一回で指摘した、読書法や速読術等の流行が示しているものとほぼ同様の現象だろう。同じく「効率重視の教養」の存在を指摘するのは、
竹中優子『輪をつくる』角川文化振興財団,2021年 壮大な二元論に組み込まれた固有名詞が、まず面白い。 人類を二分する際に、「森口博子を知る者と知らない者」という二分法は間違いなく粗い。森口博子を知っているのは基本的には日本人の一部に過ぎないだろう(ガンダムの主題歌の関係でいくらかの国際的な知名度はあるかも知れないが…)。日本国民のうち森口博子を知っている人の割合は想像がつかないのだけれど、約半数だとしても五千万人程度であり、残りの人類と張り合うには心許ない。 ただ、なんとなく、一首の起点のようなものはわかる気がする。 例えば、職場などの集団にいて、森口博子を知っている人と知らない人に二分されることはあり得る。その線引きは、世代的なものになるかも知れないし、趣味的な差異の表出になるかもしれないし、芸能人の解像度の違いがあらわれたものになるかも知れないが、いずれにせよ、そういう状況は存在し得
ジュディ・ブリッジウォーター(Judy Bridgewater)という歌手をご 存知だろうか。 ジュディは、英国のブッカー賞作家、カズオ・イシグロの小説 『Never Let Me Go』(邦題『わたしを離さないで』)の中で語ら れる女性ジャズヴォーカリスト。 彼女の歌う『Never Let Me Go』は最高です。 ようやく生まれた子供に対する切実な愛を、切実なゆえにかすか に抱く不安とともに「オ-、ベイビ-、ベイビ- わたしを離さない で」と歌うところが、何とも言えません。 歌は1956年録音のLPアルバム『Songs After Dark』(『夜に聞く歌』) に入っています。 では、ジュディ・ブリッジウォーターとはどんな感じのジャズ歌手 なのでしょうか。 LPジャケットのジュディは、 「紫色のサテンのドレスを着ています。 こういうふうに肩を剥き出しにするのが当時の流行だったのでし ょ
先月、ディズニーの実写映画版『リトル・マーメイド』のティーザートレイラーが公開されました。『リトル・マーメイド』は1989年にアニメ映画が公開され、低迷気味だったディズニーに大ヒットをもたらしました。ディズニー・ルネサンスと言われる、ディズニーにとっての復活の時代の始まりとなった映画だと言われています。 『リトル・マーメイド』のヒロインである人魚のアリエルを実写版で演じるのは、黒人女性であるハリー・ベイリーです。ベイリーは歌唱力が抜群で、アニメか漫画から出てきたようなちょっと浮世離れした雰囲気もあり、ディズニープリンセスにはぴったりだと思いますが、アニメ版のアリエルは赤毛でどちらかというと白人に近い容姿でした(人魚に人間同様の人種があるのかどうかはあまりよくわかりませんが)。このティーザーは前作では白人だったアリエルが黒人になったということで人種差別的な攻撃を受けることとなりました。本作の
2015年のVIPのスレ『コナンドイル「小遣い稼ぎにキモオタ向けのラノベでも書くか」』は名スレです。 ですが、名スレであるあまり、スレそのものがひとり歩きをしています。 グーグルの検索フォームに「コナン・ドイル」と入力すると、「コナン・ドイル なんj」とサジェストされるほどです。 しかも、このスレは創作ですが、事実にもとづいて創作しています。 そのため、このスレの内容を史実だと思っているひとが多く見受けられます。ですが、史実としては誤りのほうが多いです。 ただ、このスレが名スレなのも確かです。なので、ただWikipediaでコナン・ドイルの史実を読むよりは、このスレの誤りを正したほうが頭に入るかもしれません。 以下、『コナンドイル「小遣い稼ぎにキモオタ向けのラノベでも書くか」』の真偽を検証します。 資料には主としてジョン・ディクスン・カー著、大久保康夫訳『コナン・ドイル』を使用します。 本
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