スクリャビンは違う 「地続きのロシア」という記事を書いたことがある。その時に感じていたことが、今回スクリャビン初期作品をまとめて聴くという機会を得て、よりはっきりしてきたと感じている。 ロシアというのは、時間軸を置き換えることで古くも新しくもある国だ。 京都もそのようなところがあるといえば、どうだろうか。 京都は世界大戦を、なんとなく回避した街なのだろうかという印象がある。 自分は生まれていなかったわけだし、何もわからない中での印象には違いない。でも、京都の人と戦争の話をすればそれは「応仁の
クラシック音楽家にとって、日本は国ガチャで【当たり】なのだろうか。 日本という国はヨーロッパからみれば「極東」という遠い位置にありながら、世界中のクラシック音楽家たちが演奏会をする稀な国だと思う。クラシックCDの売り上げだけでなく音楽教育においても世界トップクラスであり、クラシック音楽家たちにとっては夢のような場所だった。柴田が専門の音楽教育を昔から受けていないもかかわらず、この世界に飛び込み、人並みに仕事をこなし、西洋クラシックについて本場の人と語り合えるのは、この国に生まれたから。我々は、国ガチャに当たったのかもしれない。 フィリピンは赤道直下の熱帯地方の国だ。冬がない衝撃。300年以上にわたるスペインの統治とその後のアメリカによる統治もあってか、アジアであってアジアでない、かと言って西洋でもない、独特の雰囲気だった。名前もスペイン系やアメリカでよく聞く名前が多く、とにかく明るい。よく
クラシック音楽にはたまに驚くような破天荒な曲がある。打楽器として大砲を撃つ曲に、タイプライターを使った曲、ステージ上で卓球をする曲なんてのもあるそうだ。 中でも有名なびっくり曲に、クライマックスで「ティンパニ(太鼓)に奏者が頭から突っ込む」曲がある。マウリシオ・カーゲルの「ティンパニとオーケストラのための協奏曲」だ。 このたびその曲が聴けるコンサートがあるというので、行ってきた。 インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。 本『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました! 前の記事:おもちゃでつくるピタゴラ装置型 楽器 (デジタルリマスター) > 個人サイト nomoonwalk 期待感がすごい お邪魔したの
モーリス・ラヴェルの相続人は、《ボレロ》が2051年まで著作権が保護されるよう訴える。 莫大な”金”が絡む裁判—— モーリス・ラヴェル (1875-1937) モーリス・ラヴェルが作曲した最大の「ヒット曲」とも言える《ボレロ》。2016年、フランス国内では《ボレロ》を含むラヴェルのおよそ半数の作品の著作権が消滅しました。ラヴェルの代表作であるこの《ボレロ》を巡って、著作権の復活と延長を図ろうと、ある裁判がフランスで始まります。 以下は先日フランスで報道された新聞記事(ル・フィガロ紙、2024年2月9日付)を元に要約・再構成してお伝えするものです。日本モーリス・ラヴェル友の会では6年前にこのラヴェルの著作権問題を問うドキュメンタリー映像の日本語訳台本を掲載したこともあり、今回の報道ではドキュメンタリーで追った内容が再出されています。改めてこの厄介で「糸が絡まるような」ラヴェルの著作権問題の複
Seiji Ozawa conducting the Boston Symphony Orchestra at Carnegie Hall in 1997. He led the ensemble for 29 years.Credit...Chang W. Lee/The New York Times Seiji Ozawa, the high-spirited Japanese conductor who took the Western classical music world by storm in the 1960s and ’70s and then led the Boston Symphony Orchestra for almost 30 years, died on Tuesday at his home in Tokyo. He was 88. The cause
作詞家として高名な松本隆が松田聖子の名曲"Sweet Memories"の歌詞を清書している動画である。 ただ文字を書くだけの動画なのだが、オーラが凄まじい。可愛らしいのにどこか気品ある文字列にくぎ付けになる。 はっぴいえんど「風街ろまん」歌詞カードP5より思えば、日本語ロックの金字塔たるはっぴいえんど「風街ろまん」の歌詞カードも、当時バンドでドラムを叩いていた松本隆の手によるもの。脱力感と品の良さを併せ持ったこの字がアルバムの雰囲気を確固たるものにしている。知らなかった方も、是非上の画像を見てその威厳を感じ取ってほしい。 この字のユニークさは本人もよく理解しているらしく、過去には氏が作詞された「瑠璃色の地球」の歌詞とともに大きく自分の書き文字をあしらった新聞広告の掲載もしている。 すなわち、松本隆みたいな字を書ければ新聞にも載れるのである。 そこで、 松本隆平仮名練習方眼を作った。 こち
前回に続き、村上春樹の『海辺のカフカ』(2002)で言及されて注目されたクラシック曲を取り上げる。今回はシューベルトのニ長調のピアノソナタで、Dで表される「ドイチュ番号」では850番に当たる。 初めに、この曲を含むシューベルトのピアノソナタと村上春樹のエッセイ及び小説との絡みについては、ネット検索で下記のブログ記事を見つけたことを報告しておく。 hypertree.blog.ss-blog.jp これは凄い記事だ。『海辺のカフカ』からの引用部分は記事の終わりの方に記載されているが、そこに至るまでの文章が既に圧倒的だ。そこで、上記ブログ記事をベースに、私の個人的な思い出などを差し挟んで文章を書くことにする。 上記引用のブログ記事は、2005年に刊行された村上の音楽エッセイ集『意味がなければスイングはない』(未読)に収録された村上によるニ長調ソナタ論(2004年執筆)から論を起こす。以下、村上
古今東西の「歌」~詩と音楽を幅広くご紹介しています。ジャンルに囚われないご投稿をお待ちしております。なお、歌詞を掲載される場合は著作権にご留意ください。 ご意見・ご投稿はメールでこちらへ
12月31日に放送される「第72回 NHK紅白歌合戦」の企画枠で「マツケンサンバⅡ」が歌唱された。 松平健が歌う楽曲のシリーズ「マツケンシリーズ」として2004年にリリースされた「マツケンサンバⅡ」は、一度聴いたら忘れられない陽気なメロディと、インパクトのあるPVで注目を集めた楽曲だ。紅白歌合戦の中でも大きな注目を集め、懐かしさを感じたファンも多かっただろう。 「サンバという名前だが実はサンバではない」とも言われる「マツケンサンバⅡ」だが、実際どれくらいサンバで、どれくらいサンバでないのか。 『踊る昭和歌謡 リズムから見る大衆音楽』の著者として知られるポピュラー音楽学者の輪島裕介さんに「マツケンサンバⅡ」を考察してもらった。 <輪島裕介プロフィール> 大阪大学大学院文学研究科教授(音楽学)。専門は大衆音楽研究、近現代大衆文化史、アフロ・ブラジル音楽研究。近年は台湾ほかアジア圏における日本ポ
この項の(その1)、(その2)では、モーツァルトの「さいころ遊び」と言われている曲のうち、偽作 K.Anh.294d (K.Anh.C30.01) 、そして真作 K.516f をそれぞれ見てきた。これらは、偽作=さいころの目で作曲、真作=名前のアルファベットで作曲ということで、偶然性を取り入れている点では一見似ているように見えるが、作曲技法としては実はまったく違う内容を持っている。真作が名前のアルファベットと関係があることを世界で初めて発見した野口秀夫氏は、この曲の遊び方や評価について以下のように書いている。 「《音楽の遊び》K.516fは音楽としてどのように評価すべきなのだろうか。名前の長さは無制限であるから「組み合わせ」の計算が出来ず、可能な音楽は無限種類ある、と言っても良い程である。それならば、世界のモーツァルト・ファンが各々自分の名前を曲にして、モーツァルトと自分の合作の響きを評価
「ピアノ組曲」(1933)について (前編から続き) 一般には「ゴジラ」の作曲家として知られる 伊福部昭19歳の処女作、「ピアノ組曲」のお話しをしています。 興味のある方は、まず前編をお読みになってください。 (前編はこちら→id:putchees:20050611) 開拓期の北海道での幼少期 伊福部昭は、北海道は釧路に生まれ、 音更(おとふけ)という村*1で育ちます。 生年は1914年ですから、大正のはじめのころです。 東北地方からの開拓民が多くいた土地で、 彼は幼少の頃から東北各地の民謡などに親しみます。 そして音更には、アイヌのコタン(村)がありました。 伊福部少年はほかの和人の少年たちと違って、 アイヌの子供たちと分け隔てなく遊ぶのですが、 そのとき「民族が違うと、美観などの感性が決定的に異なる」 ということを肌で知ります。 たとえば、音楽の感性の違いです。 音を組織化する意識が、
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