リニアモデルからの脱却 産業競争力の中核はイノベーション▲の創出力である。イノベーションの発展プロセスは時代とともに進化し、また製品市場の成熟化とともに変化する。これまでは、新しい科学技術知識がイノベーション創出の主要なドライビングフォースであると考えられてきた。すなわち、まず「研究」を行い、その結果、生まれた科学技術知識を応用して、新製品開発につなげるという、「研究」→「開発」→「設計」→「製造」→「販売」の直線的な流れ、つまり「リニアモデル(linear model)」の考え方が支配的であった。これは学界、産業界、その他有識者を問わず、経営者、研究者、営業部門、さらには一般市民にまで、潜在的意識として深く浸透している。 しかし、この考え方は1980年代中頃から米国では大きく変わってきている。S・クラインは85年、イノベーションは研究から始まり開発へと進むとする「リニアモデル」を否定し、
1993年に米ハーバード大学の経営大学院、ハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School)で少人数の討論会があった。集まったのは米国企業の研究マネジャーやイノベーションの研究者である。集まった人たちには共通の認識と懸念があった。 企業の研究活動(industrial research)における1つの時代が終わろうとしている──これが共通認識である。米国企業は基礎研究を縮小し、研究開発活動を事業密着型に変えている。 それで米国経済は大丈夫なのか。これが共通の懸念だ。米国のベル研究所や、デュポン社の中央研究所などは事実上、国立研究所の役割を果たしてきた。これらの企業研究所がなくなったり、縮小したりしている。それにもかかわらず、米国の大学の研究予算が増えているという事実はない。米国のイノベーションの源泉がなくなってしまうではないか。 討論の内容は、新たな寄稿も加え
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