キャバクラやアダルトビデオなどの「夜職」、新聞記者という「昼職」、両面から社会を見つめた作家・鈴木涼美さんの書評エッセイ。一日一日を生き延びる糧となった作品を紹介していきます。 連載第1回は、2010年代に入り、『ヘルタースケルター』『リバーズ・エッジ』『チワワちゃん』が映画化、大規模な展覧会が開かれるなど、今もその作品が多くの人を引きつける岡崎京子さんの『pink』を取り上げます。 娼婦としてこの社会を傍観してみると お金をもらって誰かと寝てみると分かることがあります。分かるというより、見えてしまうと言った方がいいのかもしれません。それは、人はとにかく矛盾が嫌いな癖に、この世の論理は全くもって首尾一貫していない、ということです。そしてその整合性のないことを隠蔽するために、人はとても器用に世の中を、実際にはない色で色分けしたり、実際にある色を塗りつぶしたりして、ひとまず自分のための目眩しを