目黒考二『笹塚日記 ご隠居篇』本の雑誌社、2007年 1冊の本として読むのは、実は意外に難しいのかもしれない。何しろ3月から読みだして、読み終わったのが7月だったりする。 『本の雑誌』に連載されていたこの日記、毎月連載されていた際の1月分が実に妥当だったのだと思えるくらいに、その1月分を超えて一気に読むことがなかなか出来ない。 実に見事なまでに変化に乏しいのが魅力であり、本を読み買い物をし料理をし本の雑誌社に顔をだし本を読んだまま寝て週末は競馬へ、というこの単調さが実に良い。 今回読み返して印象的なのは、笹塚の著者の部屋が本の雑誌社のビルの上階だったということで、社員たちと接する場面が意外に多い。浜本・杉江・松村・浜田・藤原と、今私は本を開かずに社員たちの名前を挙げたのだけれど、ホンの一行か二行断片的な言及がなされる社員たちがまた、結構強い印象を残していたりする。 反面、何十冊と取り上げら