中公文庫の岡崎武志著『古本道入門』を読む。中公新書ラクレからの文庫化だけど、数ある岡崎さんの本の中でも一、二を争うくらい好きな本だ。 《六十歳目前に達したこの年まで、一度たりとも、まったく飽きることなく、古本を買い、古本屋通いを続けている》 岡崎さんと知り合って、かれこれ二十年以上になる。そのあいだ、わたしは岡崎さんの“古本道”とはちがう“古本道”を歩まねば、とおもい続けてきた。後追いしても何も残っていないからだ。いっぽう『古本道入門』を読んでいると、「よくぞ、いってくれた」とおもうことがいろいろ書いてある。いい言葉にたくさん出くわす。 《一般の書店が扱う本は「氷山の一角」にすぎない。ふだんは目につかないが、海面下に深々と眠る巨大な氷の層があるのだ》 この(新刊本は)「氷山の一角」という言葉は岡崎さんがよくつかう表現だ。膨大な古本の世界を言い表すのに、これ以上の比喩はおもいつかない。 第1