『ドナウの旅人』上下 宮本輝 新潮社[新潮文庫] 2022.10.1読了 ドナウ河は、ドイツの西南端に源流があり、オーストリア、チェコスロヴァキア、ユーゴスラビア、ブルガリア、ルーマニアの7カ国を流れる3,000kmほどの長さのある河である。読み終えた今、私も旅に出たくなった。できれば、行ったことのない国に。できれば、一人で。 定年退職を迎えた夫がいる50歳になる絹子は、ドナウ河に沿って旅をすると言って、突然家を飛び出した。娘の麻沙子は、追いかけるようにしてかつて5年間住んでいたドイツに向かう。絹子、絹子と一緒に旅をする17歳下の長瀬、娘の麻沙子、そして麻沙子の恋人のシギィの4人は、現実とはかけ離れた二度とはない旅を経験する。 麻沙子の旅の目的は、母親を説得して離婚をやめさせ日本に連れて帰ることだったのに、いつしか旅を通して麻沙子の気持ちが変化していく。それは、かつての恋人シギィとの再会も