書くことで自分から自由になる 西村 気を鎮めるために、ガムを噛みながら来てしまいまして、大先輩の前ですみません。 町田 大先輩でもないと思いますよ。年齢的にもそんなにかわんないよ。僕の方がちょっと上かな。 西村 はい。五つか六つか、ですかね。 ――実は日本酒を用意しているのですが、最初の緊張をほぐすために一杯いかがですか。 西村 あ、いや、それは……ちょっと……よろしいですか? 町田 どうぞどうぞ。僕も呑む方ですが、僕は呑むとめんどくさくなっちゃって、だるくなるから。 西村 では失礼して。 町田 昔は呑みながらの対談って結構ありましたよね。 西村 そうですよね。書き手って、昼間っから文学の話なんかできないから書いてたっていうのがあるでしょうから。ところが今の方たちってやたら弁が立つので、素面でもそういう話を延々と続けられるんですね。そんなに厚顔なら小説なんか書かないで、もっと違う、いい方向