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finalventとfinalvent's Christmas Storyに関するume-yのブックマーク (6)

  • finalvent's Christmas story 8: 極東ブログ

    人生は出会いだという人がいる。おそらくそうだろうが、出会いがあれば別れもある。ならば人生は別れだとも言いたいところだが、出会いが印象的であるのに対して、別れは必ずしもそうではない。若い日の別れは痛切な印象を残すことが多いのに、年を取るにつれ、静かに音信が途絶える別れが増える。それは悲しいことでもない。人とのつながりは必ずしも幸福に基づいているわけでもないのだ。どちらかと言えば、北風のような不幸に遭遇してたまたまそこで二人、心を寄せていることもある。いつまでもいるべき場所ではない。寄り添いから離れ、春の息吹に静かに向かって歩んでいく人がいるなら、振り返ることはしなくてもよい。残された者は、その人の幸福を祈っていればいい。たとえそこに真実がなかったとしても。 振り返ってみると、そうした人生の友とも言えた(あるいは恋人と言うべきなのかもしれないが)ルツとの音信が途切れたとき、なんとなく不安な思い

  • finalvent's Christmas Story 5: 極東ブログ

    シェレメーチエヴォ国際空港に着いたのは夜10時過ぎだった。予定より1時間遅れた。窓越しに暗い空を見上げた。モスクワの夜か。マリーに「着いた」と電話した。マリーの娘のマリーのほう。同じ名前だ。到着を気にしていたのだろう。彼女はすぐに電話に出た。用意はできているから明日夕方7時にホテルのロビーで会いましょうとのこと。電話の声を聞いていると口調から声の質までマリーに似ている。KFFサンタクロース協会のマリーに。 協会の関連で、東京で開催される途上国支援のNPO国際会議に出席してほしいとマリーから連絡があったのは3月だった。私は何をすべきなのかと問い返したとき、自分がすでに出席する気になっていることに気がついた。東京に行ってみたいと思っていた。 彼女の答えは「ごく私的な感想でいいから後で手短にレポートしてください」とのことだった。彼女がそれでいいというならそれでいいのだろう。驚いたことに8月の東京

  • finalvent's Christmas Story 4: 極東ブログ

    近所のドラッグストアの売り子で少し気になる印象を与える20歳くらいの女性がいた。天気のことや街のことを話しかけると、はずしてはいないが曖昧な答えが返る。特別な大理石に優しくノミを当てていくような感じだった。天使を彫るならそうするだろう。彼女が店から消えたことに気がついたのは、夏の終わりだった。休暇を取ったのだろうと思ったが、二か月しても戻らなかった。新しい店員にきいてみたが、知らないというのだった。街路に枯葉が舞うころ、多分もう彼女を見かけることも話しかけることもないのではないかとさみしく思った。 今年はKFFサンタクロース協会からサンタクロースに扮する依頼はなかった。会を束ねているマリーからも連絡はなかった。このままクリスマスには彼女からグリーティングカードを受け取るだけだろうと思っていたが、ふと気になって協会のサイトにログインし、会報を見る気になった。年金運用の話がある。関心はない。そ

    ume-y
    ume-y 2009/12/25
    「憎しみが、ですか?」「苦しみも悲しみも、むなしさも」
  • finalvent's Christmas Story 3: 極東ブログ

    アドベントが近づく頃、この一年で自分が随分年を取ってしまった気がした。だから今年はKFFサンタクロース協会の依頼があってもお断りしようと決めていた。それを察してか、昨年は秋の内に連絡があったマリーからも今年は音沙汰がなかった。それはそれで少しさみしい気もしたし、自分がなにか間違っているような気もしていた。 12月に入ってからマリーから手書きの手紙が届いた。この子にプレゼントを渡してくれるかしらと書かれていた。プレゼントの中身はこの子の手紙に書いてあります、とも。手紙のなかには、開封されたもう一通の手紙があり、「サンタクロース様、よく切れるナイフをください、リックより」と書かれていた。よく切れるナイフとはなんだろうと疑問に思った。マリーにはどう答えてよいかわからなかったが、無理に返信しなくてもいいです、でもそのときは、このプレゼントの話もキャンセルにします、と但し書きがあった。 私は数日ぼん

  • finalvent's Christmas Story 2: 極東ブログ

    カナダに暮らしていたティムが死んだという知らせを夏の終わりに聞いたとき、今年もKFFサンタクロース協会の仕事をすることになるだろうと予想した。10月に入りマリーから電話で「今年もお願いします、ボブ」と言われたときも、だから、わかっていましたと答えた。マリーの話では、彼は自分の命が年を越せないかもしれないのに、プレゼントをトゥンと呼ばれる子に渡すつもりでいたらしい。仕事をやり遂げることができなくなる不安はなかったそうだ。「僕が死んだらボブに頼めばいい」ということだ。ティムが私を信頼していたのはわかっていたけど、もう少しなにか思いがあったのかもしれない。 トゥンという男の子のデータを協会から受け取った。アフリカの孤児として裕福な女性の学者に引き取られて育った子ども。14歳。もうサンタクロースを信じている年ではない。それどころかすでにマスターの学位を取得し、博士研究に着手しているという。でも、子

    ume-y
    ume-y 2007/12/24
    「信頼していたよ。当たり前のことさ」
  • finalvent's Christmas Story: 極東ブログ

    KFFサンタクロース協会に奇妙な裏の顔があることを知ったのは数年前のことだった。退職した老人たちを集めて、途上国の貧しい子供たちに些細なプレゼントを渡すありがちなキリスト教慈善団体と思っていたし、その行事につきあった五年間は、この世界の圧倒的な貧しさも実感したが、どのような境遇に生まれても子供たちというのはすばらしいものだと確信できたことで、とてもよい思い出となった。 数年前協会から突然の再依頼があったときは、もう歳だからということで断った。しかし、特命の任務だという。話を聞いて驚いた。世界でも有数の大富豪の家に行ってほしいというのだ。トナカイのソリというわけにはいかないが、飛行機も自動車も用意するという。身なりはもちろん世間のイメージ通りのサンタクロース。 その格好がこの季節一番不審に思われないでしょう、とマリーは言った。上品なおばあさんのようでいて、彼女は協会の最高幹部の一人だった。特

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