バタバタしてたら、大蟻食さまの新刊が出てるの、ちっとも知らなかったよ。 「メッテルニヒ氏の仕事」が雑誌に連載中で、そのうち本になるだろうことは知ってたけど、「金の仔牛」はまったく知らなかった。 これがなんと、18世紀フランスを舞台にした、バブル経済小説!びっくり、と思ったけど、さすが大蟻食様、読みだしたらホント、やめられないとまらない、なのですわ。 題材となったのはヨーロッパ三大バブルのひとつと呼ばれた「ミシシッピ計画」だそうで、全然知らないものだったのですが、予備知識なしで十分楽しめ、ついでに言うと、18世紀フランスなど知るわけがない私が、いやー、きっとこうだったんだろうなー、と、その雰囲気に浸ることができるのは、佐藤亜紀ならでは、でございます。 (なお、ミシシッピ計画はあくまでも背景なので、それ自体についての解説は本書にはなく、これを主導したジョン・ローという名も出てこないのですが、W
二〇〇六年、ザルツブルク音楽祭で上演された、アーノンクール指揮/クラウス・グート演出の「フィガロの結婚」は、心ある人々の大顰蹙を買う、ある種の名上演であった。 オペラの舞台上演では時々これが起こる。例えば一九七六年バイロイトのブーレーズ/シェローによる「ニーベルングの指輪」がその古典的な例だ。 NHK-FMでの年末の放送に耳を傾けていた中学生の私は、終演後の床を踏み鳴らす音とブーイングの声に驚き、かつ恍惚とした---これほどまでに熱烈な賛否を巻き起こすものが詰まらない訳がない。今日、録画で見ると極めて洗練された美しい舞台としか言い様がないのだが、当時の観客にとってこの再解釈は極めてショッキングであった。 再解釈など今では珍しくもなくなり、滑って目も当てられないという例も山のように目にし、オーソドックスな演出も「演出の時代」と録画鑑賞の習慣の普及による歌手の演技力の異様なまでの向上によって別
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