あえて近代化の波に乗り遅れ、江戸時代さながらの農村生活を残してきたヒマラヤ山脈南麓(なんろく)の小国、ブータンが激変している。 人口約70万人のこの国の国王は、仏教文化の伝統的なライフスタイルが国民の幸せにつながるとして、1970年代に「GNP(国民総生産)よりもGNH(国民総幸福)」と国際社会に訴え始めた。経済成長一辺倒の世界の潮流に途上国が異を唱えたインパクトは小さくなく、日本でも鳩山政権がGNHの研究に乗り出したことでも知られる。 私は学生時代、ブータンを訪れたことがあった。今回、約14年ぶりにブータンのパロ空港に降り立った。かつて、搭乗の際に預けた荷物は、ブータンに着くと飛行機からそのまま直下の原っぱにほうり出され、おのおのが勝手に持っていく仕組みだった。今や立派なターミナルビルが建っている。 空港の外を歩くと、伝統建築を意識した5階建てのビルが並び、14年前の街をまったく思いだせ