トップ > 社説・コラム > 中日春秋一覧 > 記事 【コラム】 中日春秋 2011年5月30日 海から遡上(そじょう)してきたアユの稚魚が、魚道で跳びはねる姿が見える季節になった。<わが影を梳(す)きてあまたの鮎上る>大山安太郎。解禁が待ち遠しいという釣りファンも多いだろう ▼震災で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市の広田湾に注ぐ気仙川は、天然アユの遡上で知られる。毎年七月一日にアユ釣りが解禁になると、たくさんの釣り人が県内外からやってくる ▼津波の影響で河口付近の流れが変わってしまった。がれきが流れを阻んでいる場所もあり、例年のようにアユが戻ってくるか心配されていたが、河口から八キロほど上流で約百匹のアユが遡上しているのが先日、確認されたという ▼人間が築いた多くの建物がもろくも津波に流され、その衝撃から私たちは立ち直れないでいる。しかし、自然は何も起きなかったかのように、はるか昔か