【※殊能将之『鏡の中は日曜日』『樒/榁』、麻耶雄嵩『隻眼の少女』の真相に触れていますので、未読の方はご注意ください】 『鏡の中は日曜日』(2001。以下『鏡』と略す)を初めて読んだのは、今から八年くらい前になる。当時私は、「とにかく驚きのあるもの」が好きで、あらすじ紹介に「驚天動地」「大どんでん返し」などとあろうものなら、かまわず飛びついた。だからとりわけ叙述トリックものをよく読んだ。 清涼院流水の大作群に触れたことで、その無邪気なユートピア幻想も崩壊するのだが、『鏡』を読む前にはもちろん、綾辻行人の館シリーズは全て読んでいたので、この作品のことは、館シリーズへのオマージュで、うまく叙述トリックを決めた快作、というふうに思っていた。逆にいえば、快作、としか思っていなかった。 しかし再読して感じたのは、これは快作どころの話ではなくて、そのまま殊能将之がコンスタントに作品を発表していけば、いっ