作品がリレーするもの(続き) 綾辻行人と同じ京都大学推理小説研究会出身の円居挽は、野性時代2014年6月号の「私の愛する本格ミステリ」特集に寄せて、「私の偏愛ミステリ作品」というテーマに『鏡の中は日曜日』を挙げ、こう述べている。 本格ミステリの華といえば奇妙な館や見立て殺人、そして名探偵だ。 しかし十年前の私はその華との距離感にとても悩まされていた。そうした要素が本格ミステリらしさを形作っているのは間違いないのに、要素に凝れば先輩作家の劣化コピーにしかならず、新人に要求される新鮮さから遠ざかっていく……そんなジレンマがあった。 だが、それを解消するきっかけになった本が『鏡の中は日曜日』だ。 (……)この作品は陳腐どころか、奇妙な新鮮さを備えていた。オリジナリティと言い換えてもいい。そしてそれは私が喉から手が出る程欲しかったものだ。 そのオリジナリティが殊能氏の膨大なインプットとそれを抽出す