Published 2024/05/23 21:27 (JST) Updated 2024/05/23 21:45 (JST) 【ストレーザ共同】日銀の植田和男総裁は23日、訪問先のイタリア北部ストレーザ近郊で記者団の取材に応じ、日本経済の先行きについて、今春闘での賃上げで所得が上向くとして「持ち直す」との見方を示した。
「量的引き締め(QT)」観測が浮上 金融市場では、日本銀行が国債買い入れを削減し、国債保有残高の削減を本格的に進める「量的引き締め(QT)」が近いうちに実施されるのではないか、との観測が浮上している。そのきっかけとなったのは、日本銀行が13日実施した定例の国債買い入れオペで、長期債の購入を減らしたことだ。 残存期間「5年超10年以下」の長期国債の購入予定額を4,250億円とし、前回から500億円減らしたことだ。1回あたりの買い入れ額の減額は、昨年12月以来のことである。 3月19日にイールドカーブ・コントロール(YCC)を解除した後は「これまでとおおむね同程度」、つまり月間6兆円程度の買い入れを続ける方針を日本銀行は決めた。そして4月以降は、「5年超10年以下」の買い入れ額を4,000億〜5,500億円とレンジで示してきたが、実際には買い入れ額の据え置きを続けていた。 「5年超10年以下」
厚生労働省が9日公表した3月の毎月勤労統計調査で、物価変動を考慮した実質賃金は24カ月連続でマイナスとなり、過去最長を更新した。岸田文雄首相は「今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現する」と話す。賃上げや定額減税の効果で、実質賃金は夏ごろにプラス圏に浮上しそうだが、仮に1ドル=170円まで円安が進むと、秋には再びマイナス圏に沈む恐れがある。 賃上げと減税効果に期待3月の実質賃金は前年同月比2・5%減と、2カ月連続で減少幅が拡大した。現金給与総額は増え続けているものの、それ以上に物価上昇の勢いが強い。 実質賃金のマイナスは、労働者の生活の苦しさを表す。岸田政権は物価上昇を上回る所得の実現を最重要課題の一つに掲げ、大幅な賃上げの実現を後押しすると同時に、6月から1人当たり4万円の所得税と住民税の減税を行い、可処分所得の増加を図っている。 こうした政策の後押しも踏まえ、多くの民間シンクタンクでは夏
総務省は3月29日に、東京都区部の3月分CPI(消費者物価指数)を公表した。コアCPIは、1月に前年同月比+1.8%と2%を割り込んだが、2月には前年の物価高対策の効果が剥落したことで、同+2.5%まで上昇した。3月には同+2.4%と再び低下し、物価上昇率が低下傾向を辿っていることを改めて確認させた。 3月の東京都区部CPIの前年同月比を2月と比較した場合、都市ガス代、電気代など、エネルギー価格が+0.15%ポイントの押し上げ寄与となった。半面、生鮮食品を除く食品が-0.08%ポイント、宿泊料がー0.04%ポイント、家庭用耐久財が-0.02%ポイントと、それぞれ押し下げ寄与となった。 従来、CPIを顕著に押し上げていた生鮮食品を除く食料品価格は3月に前月比+0.3%と緩やかな上昇となり、前年同月比は+4.6%と昨年のピークの半分程度まで低下した。輸入原材料価格を製品に転嫁する動きが一巡して
実質賃金上昇率の下落率大幅縮小は一時的 厚生労働省が7日に発表した1月分毎月勤労統計で、実質賃金は前年同月比-0.6%と、22か月連続で下落となったものの、下落幅は12月の同-2.1%から大きく縮小した。しかしこれをもって、実質賃金がプラスに転じる時期が近付いたと考えるのは誤りだ。 1月の実質賃金上昇率の下落幅が大きく縮小したのは、主に2つの要因による。第1は、振れの大きいボーナスなど一時金の「特別に支払われた給与」が、前年同月比+16.9%と大きく上振れたことだ。しかし、より安定した動きをする基調部分の所定内賃金は、前年同月比+1.4%と前月と同水準だ。賃金の基調的な動きには変化は見られない。 第2は、実質賃金を算出するのに用いられる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が、前年同月比+2.5%と前月の+3.0%から下振れたことだ。これは宿泊料の下振れなどによる一方、前年の政府の物
おおの・かずもと/1955年、兵庫県生まれ。東京外国語大学英米学科卒業。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。現在、医療問題から経済まで幅広い分野に関して世界中で取材を行う。『代理出産―生殖ビジネスと命の尊厳』(集英社新書)、『マイケル・ジャクソン死の真相』(双葉社)などの著書、『そして日本経済が世界の希望になる』(ポール・クルーグマン/PHP新書)などの訳書がある。 総予測2024 2024年、日本と世界は一体どう変わる? ダイヤモンド編集部が総力を挙げて新たな1年を見通す、人気の恒例企画「総予測」が、前年よりもさらにパワーアップ。総勢約300人の人物の名前が登場し、多数の専門家と編集部の記者が、経済はもちろん、国際関係と政治、そして社会、文化、スポーツまでを徹底予測。先の見えない時代を生き抜くための“羅針盤”となるはずだ。 バックナンバー一覧 中国経済が減速している
マイナス金利政策解除は来年後半以降か(第3のシナリオ)こうした点を考えれば、最も可能性の高いシナリオは第3となる。来年春闘賃上げ率が期待された水準ほどに達しないことを受けて、日本銀行は2%の物価目標は短期的には達成できない、と宣言するのである。その場合、来年4月の展望レポートでは、2025年度に加えて2026年度についても物価上昇率が+2%を大きく下回る予測値を示すだろう。 そのうえで、金融緩和は長期化するとし、長期戦に備えて金融緩和の枠組みを見直す方針を示すのである。緩和が長期化すれば副作用も大きくなり、それが緩和の継続性を損ね、物価目標の達成を妨げてしまう、との説明となるだろう。そうした説明を踏まえて、副作用の軽減が狙いとしつつ、実際には、緩やかながらも本格的な政策修正に乗り出すのである。この場合、第2のシナリオのように、急激な利回り上昇が生じることもないだろう。日本銀行が想定するペー
総裁のインタビュー記事を受けて利上げ時期の見通しは前倒しへ 日本銀行は9月21日、22日に金融政策決定会合を開催する。前回7月の会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)の運営柔軟化を実施したばかりであることから、今回の会合で政策修正の実施を見込む向きは少ない。 先般の読売新聞のインタビュー記事を受けて、金融市場ではマイナス金利政策解除の時期についての見通しが前倒しされた。エコノミストに対する各種アンケート調査によると、来年4月のマイナス金利政策解除を見込む向きが最も多くなり、それについで来年1月の見通しも少なくない。一部では年内の実施も見込まれている。 ただし、読売新聞のインタビュー記事を受けた長期利回り上昇といった金融市場の反応や、先行きの政策見通しの修正はやや過剰反応だろう。記事の中で植田総裁は、現状は「来年の賃金上昇につながるかどうか見極める段階だ」としたうえで、「(来春の賃上
総務省が7月21日に公表した消費者物価指数によると、23年6月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比3.3%(5月:同3.2%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:3.3%、当社予想も3.3%)通りの結果であった。 家具・家事用品の伸びが5月の前年比9.6%から同8.6%へと鈍化したが、規制料金の値上げによって電気代の下落率が縮小したことがコアCPIを押し上げた。 生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比4.2%(5月:同4.3%)、総合は前年比3.3%(5月:同3.2%)であった。 コアCPIの内訳をみると、ガス代(5月:前年比2.0%→6月:同▲1.1%)は1年10ヵ月ぶりに下落に転じたが、電気代(5月:前年比▲17.1%→6月:同▲12.4%)、ガソリン(5月:前年比▲1.7%→6月:同▲1.6%
食料品値上げの動きが鈍り始めたか 総務省が6月30日に発表した6月東京都区部消費者物価指数(CPI)は、事前予想と比べてかなり下振れた。コアCPI(除く生鮮食品)は前年同月比+3.2%と前月の同+3.1%を上回ったものの、事前予想の同+3.4%程度を大きく下回った。また、より基調的な物価動向を示すコアコアCPI(除く生鮮食品及びエネルギー)は、2か月連続で季節調整済前月比+0.2%と比較的低位に留まった。 さらに、コアコアCPIの前年同月比は+3.8%と、前月の同+3.9%から低下している。同指数の前年同月比上昇率が低下したのは、実に2022年1月以来1年5か月ぶりのことである。これは、基調的な物価上昇率にようやくピーク感が見られ始めたことを示唆していよう。 基調的な物価上昇率にピーク感が出始めたのは、食料品(除く生鮮食品)価格引き上げの動きがやや鈍り始めたことが理由だ。同価格は6月に前年
総務省が6月23日に公表した消費者物価指数によると、23年5月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比3.2%(4月:同3.4%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:3.1%、当社予想は3.2%)を上回る結果であった。 食料(生鮮食品を除く)の伸びは前月から高まったが、再生可能エネルギー発電促進賦課金の引き下げにより電気代の下落率が大きく拡大したことがコアCPIを押し下げた。 一方、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比4.3%(4月:同4.1%)と12ヵ月連続で伸びが加速した。基調的な物価上昇圧力は一段と高まっている。 コアCPIの内訳をみると、ガソリン(4月:前年比▲3.3%→5月:同▲1.7%)、灯油(4月:前年比▲3.0%→5月:同▲2.5%)の下落率が縮小したが、電気代(4月:前年比▲9.3%
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