一番心が高揚したのはキム・ビョンス(ソル・ギョング)とミン・テジュ(キム・ナムギル)の一騎打ちという「クライマックス」。随分「映画映え」する話の中、こんなところで興奮するなんて単純だなあと思いながら見ていたけれど、振り返ってみれば、例えば「キングスマン ゴールデン・サークル」の冒頭いきなり始まるアクションは意味が分からずあまり楽しめなかったっけ、翻って本作のあれこそが私好みの、文脈に文脈を重ねたアクションなんだなと思う。 私にとってこの「クライマックス」を支える文脈とは、この映画において主人公ビョンスが倒さねばならない対象は、記憶が個人のアイデンティティであるならば、それを操作しようとするやつ、「他人の日記を書き足したり一部消去したりするやつ」だということである。あの廃屋は彼の脳内の(作中大きな文字で出る)「メタファー」とも言える。また彼の記憶を引き出そうと日々気遣うビョンマン署長(オ・ダ