世界各国で物価が上昇している。だが日本の物価上昇率は他国と比べ低位にとどまっており、デフレではないがデフレ脱却とはいえない状況が続いている。本稿では第1に物価上昇率が低位にとどまる背景、第2に望ましい物価上昇率という点から、筆者の最近の研究を踏まえて議論したい。 消費者物価指数(CPI)は、消費者が購入する約500品目の価格を集計したものだ。品目は財とサービスからなる。財には卵やキャベツのような生鮮食品と、カップ麺やワイシャツ、冷蔵庫のような財(除く生鮮)がある。サービスには中華そば(外食)や理髪料、民営家賃のような民間サービスと、放送受信料(NHK)、診療代のような公共サービスが含まれる。 これらの価格が毎月、全国の調査員が約500の地区を訪問することで収集され、小売物価統計として公表される。物価を表す指標として最も多く閲覧されるCPIは、小売物価統計を集計したものだ。 今般、小売物価統