王敏(オウ ビン) 比較文化学、東アジアの文化関係学、国際日本学を研究。宮沢賢治をはじめ日本の傑作を中国に翻訳・紹介すると同時に、『三国演義』『西遊記』『紅楼夢』など中国の名作への翻案を100余冊、日本で出している。近年、日本における治水神禹王の現存形態及び、周恩来ら中国指導者の日本留学に関する史実の調査研究を究めている。2009年に文化庁長官表彰。 禹王は中国最初の王朝・夏の王であり、王になる由縁が黄河の治水における輝く功績にあることを、中国人ならだれでも知っている。中国史の始まりでもあるからだ。もともとは中国の神であるのに、日本でも民衆レベルで治水の神として「禹」が崇拝されているのは中国人にとり驚くべきことといわねばならない。 私の日本における禹王信仰との出会いは今世紀の最初のころ。講演などの機会があって各地に出向くと、史跡で「禹」の字を見ることが度々だった。「禹王信仰」の発見に通じた