一方、戦争に従事して精神を病んだセプティマス役のエドワード・ワトソンと妻役の高田茜のデュエットが踊られる。戦死した盟友エヴァンズ役のトリスタン・ダイアーとワトソンが踊る男2人のパ・ド・ドゥを、木の枠の中から見つめている高田の複雑な表情は印象的だ。全身から放たれるそれぞれの悲痛な心の叫びと複雑な感情が絡み合った演舞は、演劇の国イギリスのダンサーらしく、豊かな表現力を見せる。 意識の流れと時間の交錯は、マックス・リヒターの音楽と映像とともに、ビッグベンの鐘の音や人々のざわめき、流れる水の音などの効果音を使い、視覚化された小説の中に観客を巧みに迷いこませる。マクレガーはあらゆる手法で時の流れを表した。エイヴィスとワトソンがユニゾンで踊るとき、二人の間には時間の壁が立ちはだかっていた。 Royal Ballet act 2 Natalia Oshipova photo by Darren Thom