始まりは、耳鳴りだった。 家に帰ってほっとひと息つくと「ピー」。布団に潜り込むと「ピー」。無機質な響きが四六時中、耳のなかにまとわりついた。 そういえば、姉がずいぶんと長く耳鳴りに苦しんでいた。 耳鳴り治療の「名医」をネットで探し、都内の耳鼻科の診療所を受診した。聴力や鼓膜の検査を受けたが、異常はなかった。 診察した医師からは「気にしない方がいい」と言われ、血流をよくするビタミン剤と漢方を処方された。 だが、耳鳴りは一向におさまらない。 「このまま、治らないかもしれない」。そう考えると、余計に気になる。眠れない、眠れない……。 2週間後、再び受診して「何とかしてほしい」と頼んだ。 「一日中効いて、耳鳴りが気にならなくなりますよ」と医師から言われ、抗不安薬を処方された。眠れないときに使う睡眠導入薬も出してくれた。 ようやく、これで何とかなる――。 東京都の50代の女性は、10年ほど前のこの出