観る者に解釈を委ねる映画が好きだ。自らの人生を重ね合わせて妄想したり、物語の続きを考えたり……。ついに公開が始まったヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』は、そのお手本のような映画。この作品を観た文化人10人に、「あなたにとってのPERFECT DAYとは?」を尋ねました。
プロローグ:その旅は、一つの“香り”から始まった その香りに出会ったのは20代前半。今では想像できないくらいでっかい携帯電話をみんなが使っていた時代のことだ。 インターネットが普及する前のことだから、今のように海外のプロダクトを気軽に買うなんてことはできないし、そもそも情報がない。当時、雑誌モデルとして活動していた僕にとって、唯一、海の向こうから新しいモノや情報を届けてくれるのが、海外を飛び回っているヘアメイクさんやスタイリストさんたちだった。 あるとき、お土産にいただいた〈nahrin〉というブランドのハーブオイルに衝撃を受けた。清々しさの中にほのかな甘さのある香りは、森の中で深呼吸しているような気持ちにさせてくれ、心も体もスッキリと軽くなった。 聞けばそれは、スイスの小さな村にある修道院で暮らすシスターたちが300年以上前に作ったレシピをベースにして作られたものだという。村の図書館に眠
聴くことの意味を考えると、耳が受動的な器官であるということを押さえた上で、本でも、映画でも、言えることなんだけど……、新しい体験をしたり、新しい風景を見たり、新しい考えに触れたりするのって、好きじゃない、人間って。自分じゃない誰かの考えとか、体験とか、感覚とかを疑似体験するために本を読んだり、映画を見たりする。それと似た様なことなのかな……、もしかしたら同じと言ってもいいのかも。 ただやっぱり器官として、感覚器としてやはり視覚で認識できるようなものとは違うから、共有しているものは多いんだけど、実は音楽でしか与えられない感情とか、風景の感覚とか、時間の感覚とか、というのもあるんだと思う。それは映像とか、言葉に置き換えることができなくて、なかなか難しいんだけど、音楽でしか得られないものは確実にある。僕の経験から言うと、例えば、中学2年生の時にドビュッシーと出会って、ハマっちゃった。ドビュッシー
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