論文の中には、友達同士酒の席で浮かんできたような疑問を、「よし、みんなで調べてみよう」といった感じで、実際に実験や調査を行うといった、極めて思いつき型の論文ではないかと思えるものがある。この場合、もちろんそこには地道な研究の積み重ねなどは、論文の中でみじんも感じられない。独断的な議論でアマチュアという印象を受ける。このような論文が掲載されるためにはquestionが勝負になる。 今日紹介するMITのメディアラボからのNature論文はまさにそんな例で、「AIに道徳観を植え付ける」という状況を設定して、読者を引き込もうとする意思が見え見えの研究だが、読んでみるとちょっと拍子抜けという論文だった。タイトルはもちろん魅力的で「The Moral Machine experiment (道徳機械実験)」だ。 Questionはシンプルで、「機械の限界から事故が不可避と判断された時、いくつかの可能性