銀行で働いていた時、私は4年ほど独身寮に住んでいた。大正時代に建ったと言われても納得してしまいそうなほど古く汚い建物で、「ここに住まないといけないのか...」と、フレッシュな新社会人のキラキラした魂は全て一瞬にして絶望に突き落とされた。それでも私は4年住んだ。今日はその寮で出会った管理人夫婦の話をしよう。 4年住んでいた間に管理人夫婦は3回変わった(基本的に住み込みで夫婦が管理人として派遣されていた)。優しい人もいたし変な人もいたものだが、中でも最初の管理人は別格だった。 太っていてイカつい容姿、いかにも不健康そうな身体、「血圧は常に200です」って顔に書いてある気がした。奥さんも似たような容姿だったが、異質すぎる旦那に比べれば幾分まともだった。だがそれはほどなく気のせいだったと気づかされた。夫婦は二人とも変わり者だった。 彼らはいつだって喧嘩していた。喧嘩していない所を見た人間はおそらく