東京工業大学名誉教授 和田 章 20世紀には多くの科学技術が進展し、耐震工学の研究も進みました。しかし、スマトラ沖地震、四川地震、東日本大震災、熊本地震など地震災害・津波災害は21世紀になっても止まっていません。この悲惨な災害は、多くの尊い命を奪うだけでなく、人々が培ってきた住宅や都市を破壊します。 被災後には人々の救助、救命、緊急医療、破壊した建築の除去、がれき処理、復旧、町や村そして都市の再建に至るまで多くの人々に大きな影響を与えます。 耐震工学の研究を進めているだけでは、社会の耐震性は高まりません。人々が暮らす住宅や学校、病院、会社などの建築、橋梁、道路、鉄道などの土木構造物が実際に地震に負けないようにつくられなければ意味がありません。 建築は衣食住のひとつです。弱くて柔らかな人間がプライバシーを守って暮らし、活動するための器として、建築は重要です。地震災害を本気で減じようとするなら