憲法が定める表現の自由や、市民の「知る権利」の重要性をどう認識しているのだろうか。大いに疑問のある判断だ。 改憲運動などにとり組み、国政にも影響力をもつ日本会議の沿革や活動を書いた「日本会議の研究」について、東京地裁が出版差し止めを命じる仮処分決定をした。文中で言及した男性の名誉を傷つけたとの理由だ。 本の販売を許さない措置は、著者や出版社に損害を与え、萎縮を招くだけではない。人々はその本に書かれている内容を知ることができなくなり、それをもとに考えを深めたり議論したりする機会を失ってしまう。 民主的な社会を築いていくうえで、極めて大切な表現の自由を損なう行いであり、差し止めには十分に慎重であるべきだ。司法も「一定の要件を満たしたときに限って、例外的に許される」との立場で臨んできた。 はたして、この本は「例外」にあたるケースなのか。 差し止めを求めているのは、日本会議と関係が深いとされた宗教