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ブックマーク / call-of-history.com (62)

  • 『インノサン少年十字軍 全3巻』(古屋兎丸 作)感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    中世ヨーロッパで十字軍運動の一環として行われたと伝わる少年十字軍の逸話をモティーフにして少年たちの残酷な運命を描いた歴史漫画の傑作の一つです。 「少年十字軍」は1212年、北フランスの都市ヴァンドームに近いクロイス・シュル・ル・ロワールに住む羊飼いの少年エティエンヌが神の啓示を受けて多くの少年少女を引き連れて聖地奪還に向かったが、マルセイユで奴隷商人に売られ、ことごとく悲劇的な最期を遂げたという逸話です。同時期にドイツでニコラスという少年が率いた少年十字軍もあったがやはり同様の結末であったと言われます。 この「少年十字軍」について、現在の研究では事実であったとは考えられておらず、少年少女に留まらず老若男女多くの民衆による大規模な移住、あるいは民衆たちによる聖地エルサレムを目指した巡礼のような民衆十字軍の一種であったと見られています。語り継がれるうちに「純粋無垢な子供たちの悲劇」という伝承に

    『インノサン少年十字軍 全3巻』(古屋兎丸 作)感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー
  • 『ダンピアのおいしい冒険 1巻』(トマトスープ 作)感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    17世紀イギリス政府はスペインとの対抗上、民間船に海賊行為を許可。 その乗組員ダンピアは博識かつ好奇心旺盛!航海で出会う未知の文化、 未知の動植物、そして未知のを好んだという。この人物は実在した… ウィリアム・ダンピアは若いころから船員としての経験を積み、1679年、ジャマイカ植民地へ渡って私掠船の船員となり、1715年に亡くなるまで生涯三度の世界周航を達成した人物です。1697年に、1679年から91年まで12年の航海記録「最新世界周航記」を出版してベストセラーになり、同書で描かれた各地の動植物や現地民の風俗と様々な発見は後世の博物学・自然科学の発展に少なからぬ影響を与えました。 ダンピアの著書「最新世界周航記」は岩波文庫から上下巻で日語訳が出版されていて、生の体験が鮮やかに描かれているので一緒に読むとより楽しめると思います。同書の翻訳を行った平野敬一氏はダンピアの姿勢について『右す

    『ダンピアのおいしい冒険 1巻』(トマトスープ 作)感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー
    DG-Law
    DG-Law 2020/10/20
    これ本当に面白いので,『最新世界周航記』が出版されてダンピアが報われるところまでは続いてほしい。
  • 『<海賊>の大英帝国 掠奪と交易の四百年史』薩摩真介 著 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    英国史上有名な「海賊」というと誰が思い浮かぶだろうか?アルマダの海戦を戦ったジョン・ホーキンズやフランシス・ドレイク、財宝伝説で知られるキャプテン・キッドことウィリアム・キッド、大海賊バーソロミュー・ロバーツや黒髭エドワード・ティーチ、女海賊アン・ボニーとメアリ・リードなど、冒険活劇の主人公として描かれることも多い名前が挙がるかもしれない。しかし、上記で挙げた中には実は「海賊」とは呼べない人物もいる。ジョン・ホーキンズやフランシス・ドレイクなどは「私掠」船の船長であった。では「海賊」と「私掠」はどう違うのだろうか。 海上での掠奪行為を行うのが海賊だが、海上での掠奪行為を行うものがすべて海賊であったわけではない。中近世ヨーロッパでは掠奪は経済行為と結びついて商人や農民などから王侯貴族に至るまで掠奪行為は一般的に行われていた。近世になって掠奪に関する法整備が始まり、合法な掠奪と非合法な掠奪への

    『<海賊>の大英帝国 掠奪と交易の四百年史』薩摩真介 著 | Call of History ー歴史の呼び声ー
    DG-Law
    DG-Law 2020/10/20
    『ダンピアのおいしい冒険』と合わせて読むべきか。
  • ラファエロ作「ガラテアの凱旋」、失われた古代エジプトの青色を再現していた

    ルネサンス期イタリアの画家ラファエロ・サンティ(1483年生~1520年没)の代表作「ガラテアの凱旋(イタリア語” Trionfo di Galatea”,注1)」(1512年頃)の海と空に描かれた青色の顔料が、古代エジプトで使われていた「エジプシャン・ブルー” Egyptian blue”」を再現したものであったことが判明した。ANSAが報じている。 アッカデミーア・デイ・リンチェイのメンバーであるアントニオ・スガメロッティ教授らの調査で青色の顔料の化学組成が、西ローマ帝国の崩壊以降製法が失われていた古代エジプトの青色顔料エジプシャン・ブルーのものと一致した(注2)。ラファエロ没後500年を記念して行われたこの調査結果は「ガラテアの凱旋」が展示されているヴィッラ・ファルネジーナで2020年10月6日から2021年1月6日まで行われる「ヴィッラ・ファルネジーナのラファエロ、ガラテアとプシュ

    ラファエロ作「ガラテアの凱旋」、失われた古代エジプトの青色を再現していた
    DG-Law
    DG-Law 2020/09/09
    ヴェネツィア派VSフィレンツェ派の競争のために隣同士に描かされたんだよな。ラファエロはヴェネツィア派の隣だから色に気を使っていたらしいが,ねらってエジプシャン・ブルーを使ったのかはちょっと怪しい気が。
  • 『黒死病” Black Death”』という語の由来についてまとめ | Call of History ー歴史の呼び声ー

    「黒死病(英語Black Death”)」と呼ばれる1347年から1353年にかけての世界的なペスト流行の渦中、ヨーロッパでは各地で暴力や虐殺を含むユダヤ教徒(ユダヤ人)への激しい迫害が展開した。 中世ヨーロッパにおけるユダヤ人 ... 十四世紀のペストが「黒死病」と呼ばれるまで「黒死病” Black Death”」は近代になって使われるようになった言葉で、十四世紀当時ペストを特定する言葉は無く、同時代人はそれぞれの言葉でシンプルに「大いなる死」と呼んでいた。ジョン・ケリーによれば、当時使用された言葉として”la moria grandissima, la mortalega grande, très grande mortalité, grosze Pestilentz, peligro grande, huge mortalyte”などがある(注1)。また、十九世紀末英国の歴史家フラ

    『黒死病” Black Death”』という語の由来についてまとめ | Call of History ー歴史の呼び声ー
  • 「ヴラド・ドラクラ 3巻」感想~ワラキア公ヴラド3世の妻について | Call of History ー歴史の呼び声ー

    残虐の暴君か、国を護りし英雄か――。 15世紀中期。南にヨーロッパを席巻するオスマン帝国、西に大国ハンガリー。 ふたつの強国に挟まれた小国・ワラキア(現・南ルーマニア)にひとりの若き公が戴冠する。 その名は、ヴラド三世。 国内政治は貴族に支配され、外交は大国の情勢に左右される中、 ヴラドは故国・ワラキアを護るため、そ... 衝撃のラストだった二巻に続いて、三巻では大貴族アルブとの戦いが決着。ワラキアはヴラド3世の下で安定をみることになります。また、英傑フニャディ・ヤーノシュも回想で登場し、ヴラドに大きな影響を与えたエピソードが挿入されています。ついに巻で宿敵メフメト2世登場。若き日のヴラドとの出会いと友情、そして訣別の思い出が描かれています。そのメフメト2世率いるオスマン帝国がワラキア公国へと目標を定め、その対抗としてヴラドはハンガリー王マーチャーシュ1世の従姉妹イロナ・シラージとの政略

    「ヴラド・ドラクラ 3巻」感想~ワラキア公ヴラド3世の妻について | Call of History ー歴史の呼び声ー
    DG-Law
    DG-Law 2020/03/24
    アルブさんが意外とあっさり死んだけど,メフメト2世を早く書きたかったんだろうと思うと納得が行く。/奥さん含めて幽閉期間をどう処理するのかはずっと気になってる。
  • 近代女性小説家誕生の歴史を描く意欲作『カイニスの金の鳥』(秦和生 作)感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    あらすじとみどころ――「秘密」と「信頼」時代は十九世紀初頭、英国グロスターシャーの牧師の家に生まれた女性リア・ボイドは幼いころから小説を書いていたが、“女性が小説を書くなんて“”女性に小説は書けない“といった周囲の無理解から、架空の男性アラン・ウェッジウッドを創作してアランの作品と騙るようになった。十九歳になっても小説家の夢捨てきれず、自身の作品をアラン・ウェッジウッドの筆名で出版社に投稿、ついに出版の運びとなり、リアは長い髪を切り、男装してアラン・ウェッジウッドという男性になりきってロンドンへ上京する。ロンドンではマイルズ・キーツという作家の知己を得て、彼のアパートの隣室で、自身が女性であることを秘したまま共同生活を始めることになる――というのが1巻の大まかなあらすじです。 近代、女性に対する抑圧と無理解という逆境の中で自身の夢に向かって突き進む主人公という王道のストーリーラインがまずあ

    近代女性小説家誕生の歴史を描く意欲作『カイニスの金の鳥』(秦和生 作)感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー
  • 『動物裁判 西欧中世・正義のコスモス (講談社現代新書)』池上俊一 著 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    十二世紀から十八世紀にかけて、フランス・ドイツを中心とした西ヨーロッパ一帯で盛んにおこなわれていたのが、動物や昆虫を被告として正規の裁判にかけて裁く「動物裁判」という慣習であった。この中世・近世期ヨーロッパに特異な法慣行はなぜ行われていたのか、その実態を浮き彫りにする、1990年の発売以来ロングセラーとなっている一冊である。 書は二部構成で、第一部では史料に登場する多数の動物裁判事例が紹介される。例えば、冒頭に紹介されている動物裁判の例は1457年1月10日、フランス・ブルゴーニュ地方サヴィニー村で起きた、五歳の少年をい殺した雌豚に対する裁判である。前年1456年末、仔豚たちに餌をやっていた被害者ジャン・マルタンに突然襲いかかった母豚がい殺してしまった。これに対し、ブルゴーニュ公の侍臣を裁判官とし、豚の所有者と「実行犯」の母豚および仔豚六匹を被告、サヴィニー村の領主を原告、さらに検察

    『動物裁判 西欧中世・正義のコスモス (講談社現代新書)』池上俊一 著 | Call of History ー歴史の呼び声ー
    DG-Law
    DG-Law 2020/01/05
    そういえば読んでないな。/12世紀ルネサンスまたは大開墾時代による現象,ということか。
  • 『ネオ・エヌマ・エリシュ 1巻』(マミー作)感想~アッシリア愛に溢れた歴史漫画開幕 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    簡単なあらすじカリスマ女子高生ギャル須藤英里(エリちゃん/エリ様)は姉のデートに付き合わされて博物館で見たバビロニアの創世神話「エヌマ・エリシュ」の原とされる粘土板から聞こえる声に誘われて、気付くと紀元前669年の古代オリエント世界にタイムスリップしてしまいます。 バビロニアの最高神マルドゥクの使いという翼を持った白いライオンの姿を持つパズズの背からエリちゃんが落下した場所は新アッシリア帝国とクシュ・エジプト王国(エジプト第25王朝)が争う戦場。そこでアッシリアの皇子アッシュールバニパルと運命の出会いを果たします。パズズはアッシュールバニパル皇子の庇護下に入ったエリちゃんに、元の世界に戻るためには、七つに割れた「エヌマ・エリシュ」の原を一つに集める必要があると語ります。 舞台となるアッシリア帝国の略史最近ではセミラミスの名とセットで覚えている人も多いであろう、古代オリエント世界に君臨し

    『ネオ・エヌマ・エリシュ 1巻』(マミー作)感想~アッシリア愛に溢れた歴史漫画開幕 | Call of History ー歴史の呼び声ー
    DG-Law
    DG-Law 2019/11/19
    作者の歴史への愛がとても濃そう。
  • ミタンニ(ミッタニ)王国の歴史(B.C.1500頃~B.C.1250頃) | Call of History ー歴史の呼び声ー

    古代オリエント史「紀元前1400年ごろのオリエント世界」 wikimedia commonsより/ © User:Ayselmemmedzade7 [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)] ミタンニ(ミッタニ)王国(”Mitanni or Mittani”)は前二千年紀後半、紀元前十五世紀頃から前十三世紀半ば頃までイラク北部から地中海東岸にかけての地域を支配下に置いていた古代帝国。住民の大多数は系統不明のフリ(フルリ)人であったと考えられている。現在のシリア北東部にあったといわれる首都ワシュカニが未発見のため、建国の経緯などは不明。 前1440年頃から強国となりエジプト新王国、ヒッタイト、アッシリアなどと争ったが、前十四世紀半ば頃からヒッタイト王国の攻勢により衰退、強大化したアッシリア帝国の攻勢を受け、前

    ミタンニ(ミッタニ)王国の歴史(B.C.1500頃~B.C.1250頃) | Call of History ー歴史の呼び声ー
    DG-Law
    DG-Law 2019/08/01
    首都の遺跡が見つからないなんてマイッタニ,という電波が降ってきた。どうしてくれよう。
  • 『薔薇戦争 イングランド絶対王政を生んだ骨肉の内乱』陶山 昇平 著 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    中世の終わりの始まりとなった「応仁の乱」(1467~77)。日を二分した戦乱でありながら諸勢力が入り乱れ複雑な様相を呈したことで良く知られ、最近では、呉座勇一氏による解説書『応仁の乱』が大ベストセラーとなったことで非常に注目を集めた。この「応仁の乱」と同時期、イングランドでも、国を二分しながら諸勢力が複雑に入り乱れて争う、「応仁の乱」と実によく似た戦乱が巻き起こっている。「薔薇戦争」(1455~87)である。 呉座勇一著『応仁の乱』は「地味すぎる大乱」という惹句で話題となったが、これは「薔薇戦争」にも言えそうだ。書はその中世イングランドの地味すぎる大乱「薔薇戦争」について、近年の研究動向を大いに反映させながら概説した一冊である。 ところで、上で薔薇戦争の始期と終期を1455年から1487年までとしたが、実は諸説ある。終期は、かつてはヘンリ7世がリチャード3世を破ったボズワースの戦い

    『薔薇戦争 イングランド絶対王政を生んだ骨肉の内乱』陶山 昇平 著 | Call of History ー歴史の呼び声ー
    DG-Law
    DG-Law 2019/07/16
    ちゃんとテューダー朝が成立するだけ薔薇戦争の方がマシな感ある。全滅エンド(一人除く)なのがかえって良かった。/どう考えてもランカスター朝は一度安定しているので,1399年始点説は私的にかえって目新しい。
  • 運営資金支援のお願い~「Call of History ー歴史の呼び声ー」実績とこれから

    「Call of History ー歴史の呼び声ー」は2018年6月20日、個人ブログ「Kousyoublog」の歴史関連記事を一部移行して始めたブログ形式の歴史情報サイトです。

    運営資金支援のお願い~「Call of History ー歴史の呼び声ー」実績とこれから
  • 『図説 十字軍 (ふくろうの本/世界の歴史) 』櫻井康人 著

    豊富な図版と手堅くわかりやすいコンパクトにまとまった記述に定評のある河出書房新社の「ふくろうの」シリーズから2019年に出た「図説 十字軍」である。 十字軍というと、獅子心王リチャード1世とサラディンが名勝負を繰り広げた第三回十字軍やコンスタンティノープルで破壊の限りを尽くした悪名高い第四回十字軍など西アジアでの対イスラーム十字軍のイメージが強く、学校教育でも『西欧キリスト教勢力がイスラームの支配下に入ったイェルサレムを奪還するためにおこした軍事遠征。(中略)正式には計7回の遠征が行われたが、第1回十字軍の成功以後はその大義を失った』(全国歴史教育研究協議会編『世界史用語集』(山川出版社,2014年,98頁))と教えられているが、十字軍研究では十字軍は対イスラームに限らず、また時間的にももっと長期に取るようになっている。 著者は書の『プロローグ「十字軍」とは何であったのか?』で上記の世

    『図説 十字軍 (ふくろうの本/世界の歴史) 』櫻井康人 著
    DG-Law
    DG-Law 2019/05/22
    挙げられている理由を読む限り「参加者の自意識の観点から十字軍という概念をどこまで拡張できるか」という議論が十字軍史の主題なのかな。/とはいえ1291年なり1330年台で区切る意味はそれとは別にあると思う。
  • 『地獄の釜の蓋を開けろ~マビノギオン偽典~』(鬼頭えん 作)1~2巻感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    西暦1193年。主人公グウィンはイングランドの片田舎アーチャーフィールド(注1)で墓堀人として生計を立てる「異教徒」の少年。獅子心王リチャード1世の戴冠式で起きたユダヤ人迫害事件の生き残りで、村のおきてに反して処刑された娼婦イーニッドを埋葬したことで、村のごろつきドブソン一味の怒りを買ってしまう。ドブソン一味に襲撃され絶体絶命のピンチに陥ったそのとき、地中から姿を現したのが、「再生の大釜」を名乗る全裸幼女(割れ物注意)だった――というのが一巻の導入となるあらすじです。 最初からもう情報量がすごい。十字軍での活躍で勇名を馳せるリチャード1世(1189~1199)ですが、彼の戴冠式でユダヤ人迫害事件が起きたことは案外知られていないのではないでしょうか。 1189年7月6日、リチャード1世の戴冠式の日、王は騒ぎになることを危惧してユダヤ人の参列を禁止する触れを出していましたが、王の即位を一目見よ

    『地獄の釜の蓋を開けろ~マビノギオン偽典~』(鬼頭えん 作)1~2巻感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー
  • ケルト人の人頭崇拝

    首狩りの習俗および首級に霊性が宿るとする信仰は、近代以前の日がそうであったように、世界各地で見られる。古代ヨーロッパのケルト人の間でも敵の首を切り落とし、それを祀る人頭崇拝の慣習が見られた。 前一世紀ギリシアの歴史家ディオドロスの著書『歴史叢書 ” Bibliotheca Historica ” 第五巻二九』に以下のような記述がある。 『彼らは戦いで倒した敵の首を切り落とし、愛馬の首にぶらさげる。喜びの歌が奏でられ、凱歌が歌われる中、血まみれの遺体を従者に手わたし、これを戦利品として運び去る。そして、これら最初の成果を家に釘で打ち付けるのだ。彼らはもっとも高名な敵の頭部をレバノン杉の樹脂に浸して防腐処理を施し、それを注意深く小箱に保存する。そして、自慢げに客人たちに披露しながらこう言うのだ。祖先や父親、あるいは彼自身が、この首のために積まれた大金を断った。仲間の何人かは、首と同じ重さの黄

    ケルト人の人頭崇拝
  • 『古代オリエントの神々-文明の興亡と宗教の起源 (中公新書) 』小林登志子 著

    現代を生きる我々が知る限りにおいて、最も古い宗教は紀元前四千年頃から三千年頃にかけて登場した古代メソポタミアの神々であった。岡田明子氏との共著となった前著『シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン』はその最初期、紀元前三千年紀のシュメール人の諸都市国家で栄えた神々について紹介されたが、作では古代シュメール文明で登場した神々が古代オリエントの諸文明の興亡の中で展開し変容していく過程と、その多神教の時代がユダヤ教、キリスト教、イスラーム教といったセム系一神教の登場によって終焉を迎えるまでの約三千年の古代オリエント世界の宗教史をたどる。 日の天照大御神のように多神教の神話体系で太陽神が最高神となることは少なくなく、古代オリエントでも後にアメン神と習合して国家神アメン・ラーとなるエジプトの太陽神ラー、後にゾロアスター教のアフラ・マズダーに敗れるがイランで勢力を誇り、一時はローマ帝国でも

    『古代オリエントの神々-文明の興亡と宗教の起源 (中公新書) 』小林登志子 著
    DG-Law
    DG-Law 2019/04/22
    ぶらんこに女性を乗せて楽しむおっさんの構図,古代メソポタミアやインドまでさかのぼれるんか…… (参考画像) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B6%E3%82%89%E3%82%93%E3%81%93_(%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%AB)
  • 女子高生と一緒にレッツ登城!『東京城址女子高生 1,2巻』(山田果苗 作)感想

    高校二年生の広瀬あゆりは交際中の彼氏の浮気疑惑から言い合いとなり、その腹いせにペットボトルをゴミ箱に投げ入れるが大きく外して、近くの女の子の後頭部にクリーンヒット!平謝りで負い目を感じるあゆりは彼女、持田美音(みおん)の言うがままに城址歩きに付き合わされることになる・・・という導入です。 現在二巻まで発売中で、第一巻で紹介されるのは世田谷城、石浜城、深大寺城、江戸城、稲付城、成宗城。第二巻では渋谷城、高幡城、平山城、郷城、松城が紹介されます。城のラインナップを見てもわかる通り、城として建物が健在なのは合宿として遠出することになる長野県松市の現存十二天守松城と現皇居として一部の建物が残る江戸城だけ、残りは遺構が残っていればいい方な城址揃いです。まぁ東京なので自ずとそうなるのですが。あゆりを半ば強引に連れまわす美音の好みはお城ファンの中でも比較的コアな部類に属する、「遺構すらなくても大

    女子高生と一緒にレッツ登城!『東京城址女子高生 1,2巻』(山田果苗 作)感想
    DG-Law
    DG-Law 2019/04/06
    またとんでもなくニッチなジャンルに切り込んだ漫画だな……w
  • 古代ギリシア×百合の爽やかな傑作『うたえ!エーリンナ』(佐藤二葉作) | Call of History ー歴史の呼び声ー

    サッポー(ギリシア語 “ Σαπφώ “, 英語 “ Sappho ”)は紀元前七世紀~六世紀にかけてエーゲ海のレスボス島で活躍した、古代ギリシアを代表する女性詩人です。教科書や古代ギリシア関連の書籍では英語発音に基づくサッフォーの名で紹介されることが多いです。生前から詩人として高名で、レスボス島で若い女性たちを集めて作詞や舞踏を教えたとも言われています。 作『うたえ!エーリンナ』はそのサッポーの「学園」に入門を許された詩人を夢見る少女エーリンナを主人公にした、少女たちの愛と友情と音楽の日々を描くとても良質な歴史漫画となっています。 大胆な告白は主人公の特権!天真爛漫で前向き、自分の気持ちは臆面もなくはっきり主張するエーリンナに翻弄される、良き結婚を夢見る一見ツンツンした少女バウキスの関係が実に尊い・・・まずはエーリンナの率直さの前にバウキスがみるみる落ちていって、中盤以降にもなるとエー

    古代ギリシア×百合の爽やかな傑作『うたえ!エーリンナ』(佐藤二葉作) | Call of History ー歴史の呼び声ー
    DG-Law
    DG-Law 2019/03/24
    その後の史実がマジでエモいな……
  • 『図説 古代文字入門 (ふくろうの本)』大城 道則 編著

    歴史上の様々な古代文字の中から主要な十三種類について、それぞれ専門分野としている研究者を執筆者として「ふくろうの」シリーズらしい豊富な図版で解説した入門書。編著者はお馴染み古代エジプト史の良書を次々世に送り出してくれている大城道則氏。コンパクトな厚さだが読み始めたらついつい時間を忘れて精読させられるので、大体この厚さならこれぐらいの時間で読み終えるかな・・・という事前の予想を大きく上回ってしまう、充実の内容の一冊となっている。「ふくろうの」はよくこういうスマッシュヒット的なを出すのが流石。 古代エジプトの「ヒエログリフ」、古代メソポタミアの「楔形文字」、古代トルコの「アナトリア象形文字」、古代ギリシア・ミケーネ文明の「線文字B」、古代フェニキアの「フェニキア文字」、古代スーダン・クシュ王国の「メロエ文字」、イスラーム誕生以前のアラビア半島で使われた「古代南アラビア文字」、北アフリカ

    『図説 古代文字入門 (ふくろうの本)』大城 道則 編著
    DG-Law
    DG-Law 2019/03/15
    ある意味ネタがシンクロした(フェニキア文字的な意味で)
  • 「肥沃な三日月地帯(” Fertile Crescent ”)」とは

    ブレステッドによる「肥沃な三日月地帯」の提唱1916年、考古学者ジェームズ・ヘンリー・ブレステッド(” James Henry Breasted “ , 1865-1935)が著書” Ancient Times — A History of the Early World ”で提唱した歴史的・地理的概念である。同著は日語訳は未発売だが、すでに著作権保護期間も切れており、WEB上で公開されており、無料で閲覧することができる。同書の101頁で「肥沃な三日月地帯(” Fertile Crescent ”)」について以下の通り記している。 This fertile crescent is approximately a semicircle, with the open side toward the south, having the west end at the southeast cor

    「肥沃な三日月地帯(” Fertile Crescent ”)」とは
    DG-Law
    DG-Law 2019/03/13
    実は用語集頻度②(MAXが⑦)で,入試でもそれほど頻出というわけではなく,現在ではどちらかというとあまり覚えない部類の用語だったりする。高校世界史からはそのうち消えるかも。