セイコーインスツルは1990年代に機械式腕時計の生産を再開した。しかしその道のりは決して平たんなものではなかった。クオーツ時計に軸足を移し、一度は完全に機械式腕時計の国内生産から撤退したため、「時代は逆戻りしない」という社内での反対、事業再編や退職などによるノウハウ消失の危機などの逆風に晒(さら)された。それでも開発陣は熟練技術者や組立師を再招集し、ユーザーが身に着けたい時計とは何かを熟考してものづくりに励んでいく。技術・伝統を託す者と託される者の姿を描くこの開発ストーリーを、現在も生産現場の知識と知恵を守り続ける技術者たちに向けてお届けする。