「その使者を捕まえろ!」 真琴がいきなり叫んだ。驚くべきことに女傭兵たちは迅速に反応した。言うことだけ言って帰ろうとしたソラト総督の伝令をすばやく取り押さえる。 「なにを!?」 目を白黒させる使者に真琴は笑顔を迫らせて、 「せっかくだから任務を果たすところまで見届けていきな……ね」 最後は振り返って文武に同意を求めた。声を掛けられた方は呆気にとられた意識を取り戻すと頷いた。 「そうだな……オレはアイツとは違う」 「こんなことして……っ!」 「それはこっちの台詞だ。大丈夫、終わる頃には貴方も総督から私達に乗り換えたくなっているから」 さもなければまとめて死んでいるとは言わない真琴だった。八つ当たりみたいなものだが、伝令が戻らなければソラト総督の撤退が多少は遅れて後衛戦闘の助けになるとの計算もあった。実際のところ、総督は言いっぱなしで何もかも放り投げて逃げていたが。 ハティエ勢は急いで殿軍の態
文武が訪れた時、ソラト総督ウィリアム・バデレーは兜を脱いでワインを飲んでいた。前線に出た様子はなく、装備は綺麗なままである。 あからさまにやる気が薄い彼は、再出撃するべきとの主張にも迷惑そうだった。囮になったことで、既に自分の役目は終わった考えているようだ。部隊の再編成を行っているのも、もう一戦交えるためというよりは身の安全を図るためか。 もちろん彼も体面があるので表立って戦闘を拒否したりはしない。 「僭越である」と怒り、通じなければ「まだ再編成が終わらないのだ」と、はぐらかすのである。 「手遅れになる前に動きましょう。オシナがやられたら、次はオ……私達ですよ?後のことを考えれば、ここで戦った方が絶対に得です」 つい宿題を早くやれと叱る親みたいに言ってしまう。今なら少しは親の気持ちが分かるかもしれない。だが、抵抗する総督の気持ちはもっと良く分かる……。 「あっさり逃げた貴公に言われたくない
転移者たちはオシナで王孫ジョージ・ウェイヴェルと久しぶりに再会した。 「なかなか派手にやっているようだな」 「恐縮です」 文武は中途半端に頭を下げた。ちょっと嫌な顔をされる。少しだけ作法に馴染んできたことで、かえって与える違和感が大きくなってしまっていた。元の無知なふるまいの方が不快感は少ない。 そんなことを聞き出した転移者たちは一年前と同じふるまいをするように努めた。ジョージは文章で回答していたことを改めて聞いてくる。 「えれべーたーを落とす方法は見つかったか?」 「残念ながら……失敗して味方の上に落としてもいけませんし」 「代わりにちょっとした仕掛けを持ってきました」 湯子が弟の後を引き継いで小細工の説明をした。(こっちはエレベーターを落とすよりも飛ばしたいんだけどな)と内心で考えながら。 「ふむ……敵が去年のことを覚えていれば時間稼ぎにはなるか」 ゴッズバラ軍の司令官は頷いた。期待通
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