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ブックマーク / www.aozora.gr.jp (29)

  • ジョージ・オーウェル George Orwell The Creative CAT 訳 象を撃つ

    下ビルマのモールメンにいた頃、私は大勢の人たちから憎まれていた――生涯でただ一度、憎悪に足るだけの要職に就くことになったわけだ。町の分署の警官だった私に、無目的で狭量な反欧州的感情はひどく辛かった。彼らに暴動を起こすまでの根性はなかったが、ヨーロッパ人女性が一人でバザールを通りがかろうものなら、たぶんドレスに蒟醤(*1)を噛んだ唾を吐きかけられることになっただろう。警官たる私は明白なターゲットで、やっても大丈夫そうな場合はいつでも苛められていた。はしっこいビルマ人がサッカー場で私を蹴躓かせ、審判(これもまたビルマ人)があらぬ方を見ていた時、群衆は胸糞悪い哄笑でこれを歓迎した。それが一度きりではなかったのだ。私の後を難の及ばぬ距離だけ離れて侮蔑のヤジが付きまとい、そこいら中にいる若者連の黄色い嘲り顔がいたく神経に障るようになった。中でも最悪だったのが仏教の若い僧たちだ。町にはそんなのが何千人

  • 柳田國男 書物を愛する道

    岩波文庫をはじめ、今日弘く行われて居る数々の「文庫もの」に対して、我々古い人間の包みきれない不満は、あまりにも外国の著作が多過ぎるという一点である。西洋は国の境がもとはそうはっきりとして居らず、学者も書物もよく旅行をして居て、最初から国際共有のものが多かったが、それでさえ文庫の目録には国々各自の片よりがある。タウフニッツのような特殊の目的をもって、原文のまま出して居るものは別として、私たちの見て居るものはレクラムでもゲッシェンでもペイヨオでもキャッセルでも、又は此頃の幾つかの英米の叢書類でも、日のように外国ものばかりを六割七割までも出して居るものは一つも無いようだ。出て来る翻訳を抑えるように、もっと少しく出すようにと、言うのなら無理かも知れぬが、是ほど外国物を出すことが出来る位ならば、せめては其同量くらいは日を、並べて出すことにしてはどうかと、思わずには居られないのである。この現象

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    death6coin 2023/01/20
    “世の中の傾向というものには、事情を聴いて尤もでないものなどは一つでも有りはしない。それを一々諒として異議を挾まずに居たら、先ず新らしい社会は生れる望みが無かろうではないか。”
  • 桐生悠々 関東防空大演習を嗤う

    防空演習は、曾て大阪に於ても、行われたことがあるけれども、一昨九日から行われつつある関東防空大演習は、その名の如く、東京付近一帯に亘る関東の空に於て行われ、これに参加した航空機の数も、非常に多く、実に大規模のものであった。そしてこの演習は、AKを通して、全国に放送されたから、東京市民は固よりのこと、国民は挙げて、若しもこれが実戦であったならば、その損害の甚大にして、しかもその惨状の言語に絶したことを、予想し、痛感したであろう。というよりも、こうした実戦が、将来決してあってはならないこと、またあらしめてはならないことを痛感したであろう。と同時に、私たちは、将来かかる実戦のあり得ないこと、従ってかかる架空的なる演習を行っても、実際には、さほど役立たないだろうことを想像するものである。 将来若し敵機を、帝都の空に迎えて、撃つようなことがあったならば、それこそ人心阻喪の結果、我は或は、敵に対して和

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    death6coin 2021/05/23
    ドゥーリットル隊の空襲を受けたときに、この記事を思い出した人はどれくらいいるのか。真摯に提言を受け止めていればあんな醜態を晒すことはなかったのでは?
  • 新美南吉 おじいさんのランプ

    かくれんぼで、倉の隅(すみ)にもぐりこんだ東一(とういち)君がランプを持って出て来た。 それは珍らしい形のランプであった。八十糎(センチ)ぐらいの太い竹の筒(つつ)が台になっていて、その上にちょっぴり火のともる部分がくっついている、そしてほやは、細いガラスの筒であった。はじめて見るものにはランプとは思えないほどだった。 そこでみんなは、昔の鉄砲とまちがえてしまった。 「何だア、鉄砲かア」と鬼の宗八(そうはち)君はいった。 東一君のおじいさんも、しばらくそれが何だかわからなかった。眼鏡(めがね)越(ご)しにじっと見ていてから、はじめてわかったのである。 ランプであることがわかると、東一君のおじいさんはこういって子供たちを叱(しか)りはじめた。 「こらこら、お前たちは何を持出すか。まことに子供というものは、黙って遊ばせておけば何を持出すやらわけのわからん、油断もすきもない、ぬすっと(ねこ)の

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    death6coin 2020/04/28
    “いごこちがよくないので、いつもうちで話をきくときにとる姿勢をとって聞くことにした。つまり、寝そべって両足をうしろへ立てて、ときどき足の裏をうちあわせる芸当(げいとう)”むっちゃイメージできて笑う
  • 宮沢賢治 やまなし

    二疋(ひき)の蟹(かに)の子供らが青じろい水の底で話していました。 『クラムボンはわらったよ。』 『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』 『クラムボンは跳(は)ねてわらったよ。』 『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』 上の方や横の方は、青くくらく鋼(はがね)のように見えます。そのなめらかな天井(てんじょう)を、つぶつぶ暗い泡(あわ)が流れて行きます。 『クラムボンはわらっていたよ。』 『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』 『それならなぜクラムボンはわらったの。』 『知らない。』 つぶつぶ泡が流れて行きます。蟹の子供らもぽっぽっぽっとつづけて五六粒(つぶ)泡を吐(は)きました。それはゆれながら水銀のように光って斜(なな)めに上の方へのぼって行きました。 つうと銀のいろの腹をひるがえして、一疋の魚が頭の上を過ぎて行きました。 『クラムボンは死んだよ。』 『クラムボンは殺されたよ。』 『クラムボン

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    death6coin 2019/04/29
    おちなしいみなし?
  • マハトマ・ガンジー Mahatma Gandhi The Creative CAT 訳 日本の全ての方々へ

    始めに告白せざるを得ません。あなた方を敵視しているわけではありませんが、私はあなた方の中国に対する攻撃を激しく憎悪しています。あなた方は立派な高みから帝国の野望へと落ちてしまったのです。あなた方がその野望を実現することはできないでしょうし、あるいはアジアを分断した張人となるかもしれません。かように、あなた方はそれと知らぬうちに世界の連盟と同胞愛とを妨げているのであり、そのような連盟や同胞愛なしには人類の希望はあり得ぬからです。 五十年以上の昔、十八の若造としてロンドンで学んでいた頃から、私は故サー・エドウィン・アーノルドの著作を通じて、あなた方の国が持つ数多くの優れた資質を賞賛するようになりました。南アフリカ滞在中に、あなた方がロシア軍に対して見事な勝利を収めたと知った時はわくわくしたものです。一九一五年に南アフリカからインドに帰国してからは、私どものアシュラム(修行場)に折々属していた

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    death6coin 2017/10/12
    そして、ガンジーが独立させたインドは中国を攻撃したことを正当化するような日本の歴史修正主義者に「味方」あつかいされるようになったという・・・
  • 新美南吉 最後の胡弓弾き

    旧の正月が近くなると、竹藪(たけやぶ)の多いこの小さな村で、毎晩鼓(つづみ)の音(おと)と胡弓(こきゅう)のすすりなくような声が聞えた。百姓の中で鼓と胡弓のうまい者が稽古(けいこ)をするのであった。 そしていよいよ旧正月がやって来ると、その人たちは二人ずつ組になり、一人は鼓を、も一人は胡弓を持って旅に出ていった。上手(じょうず)な人たちは東京や大阪までいって一月(ひとつき)も帰らなかった。また信州(しんしゅう)の寒い山国へ出かけるものもあった。あまり上手でない人や、遠くへいけない人は村からあまり遠くない町へいった。それでも三里はあった。 町の門(かど)ごとに立って胡弓弾(ひ)きがひく胡弓にあわせ、鼓を持った太夫(たゆう)さんがぽんぽんと鼓を掌(て)のひらで打ちながら、声はりあげて歌うのである。それは何を謡(うた)っているのやら、わけのわからないような歌で、おしまいに「や、お芽出(めで)とう

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    death6coin 2017/10/12
    泣きそうだった(泣きたいのだが)
  • 中谷宇吉郎 私のふるさと

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    death6coin 2017/09/22
    両手に孫!
  • グリム 中島孤島訳 杜松の樹

    むかしむかし大昔(おおむかし)、今(いま)から二千年(ねん)も前(まえ)のこと、一人(ひとり)の金持(かねも)ちがあって、美(うつ)くしい、気立(きだて)の善(い)い、おかみさんを持(も)って居(い)ました。この夫婦(ふうふ)は大層(たいそう)仲(なか)が好(よ)かったが、小児(こども)がないので、どうかして一人(ひとり)ほしいと思(おも)い、おかみさんは、夜(よる)も、昼(ひる)も、一心(しん)に、小児(こども)の授(さず)かりますようにと祈(いの)っておりましたが、どうしても出来(でき)ませんでした。 さてこの夫婦(ふうふ)の家(うち)の前(まえ)の庭(にわ)に、一(ぽん)の杜松(としょう)がありました。或(あ)る日(ひ)、冬(ふゆ)のことでしたが、おかみさんはこの樹(き)の下(した)で、林檎(りんご)の皮(かわ)を剥(む)いていました。剥(む)いてゆくうちに、指(ゆび)を切(き)っ

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    death6coin 2017/09/12
    闇が深い。特に実母を殺されて喜んでいるマリちゃん
  • 中谷宇吉郎 おにぎりの味

    お握りには、いろいろな思い出がある。 北陸の片田舎で育った私たちは、中学へ行くまで、洋服を着た小学生というものは、誰(だれ)も見たことがなかった。紺絣(こんがすり)の筒っぽに、ちびた下駄。雨の降る日は、藺草(いぐさ)でつくったみのぼうしをかぶって、学校へ通う。外套(がいとう)やレインコートはもちろんのこと、傘をもつことすら、小学生には非常な贅沢(ぜいたく)と考えられていた。 そういう土地であるから、お握りは、日常生活に、かなり直結したものであった。遠足や運動会の時はもちろんのこと、お弁当にも、ときどきお握りをもたされた。梅干のはいった大きいお握りで、とろろ昆布でくるむか、紫蘇(しそ)の粉をふりかけるかしてあった。浅草海苔(あさくさのり)をまくというような贅沢なことは、滅多にしなかった。 しかしそういうお握りの思い出は、あまり残っていない。それよりも、今でも鮮(あざや)かに印象に残っているの

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    death6coin 2017/09/05
    飯テロ文庫
  • 中谷宇吉郎 日本のこころ

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    death6coin 2017/09/03
    一日7時間40分。雑談も間食もなくみっちり働くアメリカ人・・・
  • 芥川龍之介 大正十二年九月一日の大震に際して

    一 大震雑記 一 大正十二年八月、僕は一游亭(いちいうてい)と鎌倉へ行(ゆ)き、平野屋(ひらのや)別荘の客となつた。僕等の座敷の軒先(のきさき)はずつと藤棚(ふぢだな)になつてゐる。その又藤棚の葉の間(あひだ)にはちらほら紫の花が見えた。八月の藤の花は年代記ものである。そればかりではない。後架(こうか)の窓から裏庭を見ると、八重(やへ)の山吹(やまぶき)も花をつけてゐる。 山吹を指(さ)すや日向(ひなた)の撞木杖(しゆもくづゑ)    一游亭 (註に曰(いはく)、一游亭は撞木杖をついてゐる。) その上又珍らしいことは小町園(こまちゑん)の庭の池に菖蒲(しやうぶ)も蓮(はす)と咲き競(きそ)つてゐる。 葉を枯れて蓮(はちす)と咲ける花あやめ  一游亭 藤、山吹、菖蒲(しやうぶ)と数へてくると、どうもこれは唯事(ただごと)ではない。「自然」に発狂の気味のあるのは疑ひ難い事実である。僕は爾来(じ

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    death6coin 2017/09/02
    「普通の日本人」を思い出しますね
  • 中谷宇吉郎 語呂の論理

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    death6coin 2017/08/31
    劣性遺伝の間違いもこういうのから来ている
  • 中谷宇吉郎 立春の卵

    立春の時に卵が立つという話は、近来にない愉快な話であった。 二月六日の各新聞は、写真入りで大々的にこの新発見を報道している。もちろんこれは或(あ)る意味では全紙面を割(さ)いてもいいくらいの大事件なのである。 昔から「コロンブスの卵」という諺(ことわざ)があるくらいで、世界的の問題であったのが、この日に解決されたわけである。というよりも、立春の時刻に卵が立つというのがもし統ならば、地球の廻転(かいてん)か何かに今まで知られなかった特異の現象が隠されているのか、あるいは何か卵のもつ生命に秘められた神秘的な力によるということになるであろう。それで人類文化史上の一懸案がこれで解決されたというよりも、現代科学に挑戦する一新奇現象が、突如として原子力時代の人類の眼の前に現出してきたことになる。 ところで、事実そういう現象が実在することが立証されたのである。『朝日新聞』は、中央気象台の予報室で、新鋭

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    death6coin 2017/07/25
    世に疑似科学の種は尽きまじ
  • 中谷宇吉郎 雪

    千七百七十年正月七日越後の国塩沢に生れた鈴木牧之(ぼくし)が天保年間に著(あらわ)した『北越雪譜』は、雪に関する考察と雪国の生活とを書いた書物として有名であり、かつ日ではこの種の文献が殆どない点で珍重されているものであるが、暖国の人には想像もつかぬ事柄が描かれている。 「左伝(さでん)に平地尺に盈(みつる)を大雪と為(す)と見えたるは其(その)国暖地なればなり。唐の韓愈(かんゆ)が雪を豊年の嘉瑞(かずい)といひしも暖国の論なり。されど唐土(もろこし)にも寒国は八月雪降(ふる)事五雑俎(ござっそ)に見えたり。暖国の雪一尺以下ならば山川村里立地(たちどころ)に銀世界をなし、雪の飄々(ひょうひょう)翩々(へんぺん)たるを観て花に諭(たと)へ玉に比べ、勝望美景を愛し、酒音律の楽を添へ、画(え)に写し詞(ことば)につらねて、称翫(しょうがん)するは和漢古今の通例なれども、是(これ)雪の浅き国の楽

  • 海野十三 階段

    1 出来ることなら、綺麗に抹殺してしまいたい僕の人生だ。それを決行させては呉(く)れない「彼奴(きゃつ)」を呪(のろ)う。「彼奴」は何処(どこ)から飛んできて僕にたかったものなんだか、又はもともと僕の身体のうちに隠れていたものが、或る拍子に殻(から)を破ってあらわれ出でたものなんだか判然しないのであるが、兎(と)も角(かく)も「彼奴」にひきずられ、その淫猥(いや)らしい興奮を乗せて、命の続くかぎりは吾(われ)と吾(わ)が醜骸(しゅうがい)に鞭をふるわねばならないということは、なんと浅間(あさま)しいことなのであろう。 嗚呼(ああ)、いま思い出しても、いまいましいのは、「彼奴」が乗りうつったときの其(そ)のキッカケだ。あの時、あんなことに乗り出さなかったなら、今ごろは「キャナール線の量子論的研究」も纏(まと)めることができて、年歯(ねんし)僅(わず)か二十八歳の新理学博士になり、新聞や雑誌に

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    death6coin 2017/06/09
    オチが酷いw大人向け
  • グリム兄弟 Bruder Grimm 楠山正雄訳 おおかみと七ひきのこどもやぎ DER WOLF UND DIE SIEBEN JUNGEN GEISSLEIN

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    death6coin 2017/06/08
    「粉屋はこわくなって、おおかみの前足を白くしてやりました。まあ、こういうところが、人間のだめなところですね。」
  • 海野十三 軍用鮫

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    death6coin 2017/06/03
    軍用鯖があってもいいよね?
  • グリム兄弟 Bruder Grimm 楠山正雄訳 ルンペルシュチルツヒェン RUMPELSTILZCHEN

    むかし、あるところに、こなやがありました。水車小屋でこなをひくのを商売にして、まずしくくらしてはいましたが、ひとり、きれいなむすめをもっていました。 ところで、ひょんなことから、このこなやが、王さまとむかいあって、お話することになりました。そこで、すこしばかり、ていさいをつくろうため、粉屋はこんなことをいいました。 「わたくしに、むすめがひとりございますが、わらをつむいで、金にいたします。」 王さまは、こなやの話を聞いて、 「ほほう、それはめずらしいげいとうだね。ほんとうに話のとおり、おまえのむすめに、そんなきようなことができるなら、さぞおもしろいことであろう。では、あした、さっそく城へつれてくるがいい。ひとつ、わたしがためしてみてやろう。」と、いいました。 さて、むすめが、いやおうなし、王さまのところへつれてこられると、王さまは、むすめをさっそく、わらのいっぱいつんであるおへやにいれまし

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    death6coin 2017/06/01
    「西の善き魔女」のキャラクター名の元ネタ。初見
  • 中島敦 南島譚 夫婦

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    death6coin 2017/04/18
    エビルはあなたの家庭にもいるかもしれない。リメイは絶対にいない!