Ⅰ はじめに 棋譜の著作権法上の保護については諸説あるところ(Ⅲ・1・(2)参照)、これまで裁判所においてこの点が直接判断された事案は存在していないと思われる。本判決は裁判所が直接棋譜の著作物性について判断したものではないものの、問題となっている動画(後述Ⅱ・1の「本件動画」)が棋譜に関する「著作権を侵害するものではない」ことについて当事者間に争いがないとされ、それを前提に判断がなされたが、棋譜の保護について考える上で参考になるものと思われる。以下では、本判決の概要を紹介した上で(Ⅱ)、棋譜の保護(Ⅲ・1)及び動画プラットフォーム事業者の役割(Ⅲ・2)等について簡単にコメントしたい。 Ⅱ 事案の概要と判決要旨 1 事実の概要 原告はYouTube及びツイキャスにおける動画配信者であり、被告は囲碁将棋の実況中継を有料で動画配信する会社である。被告が配信する将棋の実況中継から得た情報を基に、原