名所江戸百景は江戸の町、浮世絵、広重の3者にとって、集大成と位置づけられる作品です。 江戸の町 作品が発行された時期はペリー来航(1853)、安政江戸地震(1855)、日米修好通商条約(1857)、安政の大獄(1858-59)などの事件が続きました。明治維新へ向かう、動乱の幕開けの時代です。江戸名所百景の発行から10年後の1868年に、明治元年を迎えます。 幕末の江戸は人口100万人が暮らす、世界一の大都市でした。名所江戸百景には、江戸から東京になる直前の成熟した江戸の町が描かれています。 江戸浮世絵 浮世絵は江戸時代初期に登場し、モチーフや色数、構図で独自の進化を遂げました。当初は美人画や役者絵、武者絵に人気がありました。葛飾北斎が『富嶽三十六景』で風景画という分野を切り開きました。江戸時代後期の旅行ブームを追い風に、風景画は大流行したのです。 幕末に発行された、名所江戸百景は江戸浮世絵