※本稿は、2020年2月27日に開催されたポピュリズム国際歴史比較研究会の第一回会合で報告した内容の一部である。 板橋拓己(成蹊大学法学部教授) 近年、政治学におけるポピュリズム研究の増加は凄まじい。それは何よりも、現実政治の動きを反映している。画期はやはり2016年であろう。この年、欧州連合(EU)離脱を問うイギリスの国民投票で離脱派が勝利し、またアメリカの大統領選で当初誰もがキワモノと思っていたドナルド・トランプが勝利した。そして、この大西洋の両岸で起きた「事件」を説明するキーワードとして脚光を浴びたのが、ポピュリズムである。たとえば『ニューヨーク・タイムズ』で「ポピュリズム(populism)」および「ポピュリスト(populist)」という語が用いられた回数は、2015年の671回から、2016年には1,399回と飛躍的に伸び、さらに2017年には2,537回となった。アカデミズム