昨年6月末に香港で国家安全維持法(以下、国家安全法)が施行されてから半年あまりが経った。現在の香港は、新型コロナウイルス感染症の「第四波」下にあり、その感染拡大防止のため一般ビザでの入境は許されていないが、居住権を持つ筆者は1月初めに香港に降り立った。 「香港を教えられない」大学 「インタビューは無理だと思う。今はみんな顔も名前も出したがらないから」 ちょっと水を向けると、人々は口々にそう言った。だが、その一方でレコーダーを回さない場での面談ではだれもが饒舌で、市井で、またそれぞれの仕事場で目にし、体験している「香港の変化」を多く耳にした。 今回最も驚いたのは、大学で社会学を教える人物が「授業で香港を題材にすることができなくなった」と言ったことだった。以前なら当然のように香港のデモなどを例に語っていたテーマも、いまはタイやギリシャなど他の国にすり替えているというのだ。 「授業での言葉尻がど