大きな足跡 多彩な評価 「旅する巨人」と呼ばれる民俗学者の宮本常一(1981年没)が生まれて、今月でちょうど100年を迎えた。長く忘れられた存在だったが、ここ数年、再評価の動きが活発で、様々な切り口の出版が相次いでいる。宮本が記録した日本人のごく普通の生活。失ってしまったものの尊さに我々はようやく気づき始めたのだろうか。(片岡正人) 「勤勉も正直も父母の日常生活のうちにこれを学んだのである」「体験から出た言葉はいつも真理であった」「その人間がどういう思想を持つかでその地域の風景が決まってくる」 「宮本常一を語る会」代表世話人の長岡秀世氏が制作・発行した『思索する旅人 宮本常一 名言至言語録』(1715円)には、珠玉の発言31編が雅味豊かな書画とともに紹介されている。官庁や大企業の無責任体質を見せつけられるにつけ、16万キロに及ぶ旅を通じ、名もなき人々の営みに触れる中で形成された“宮本哲学”