森見登美彦氏の部屋は、「毛深い子」執筆、その他もろもろのドタバタのために、ほとんど機能を失っていた。 机のうえには本やFAX用紙やメモ帳が散乱し、台所には汚れた皿が積み上がり、洗濯物は溢れ、床はまた足の踏み場がなかった。このままでは、やるべきお仕事さえゴミの中に埋もれて、何がなんだか分からなくなる。 登美彦氏は意を決し、片づけに立ち上がった。 その過程で登美彦氏は驚くべきことを発見したと主張する。 「朝起きても、なかなか朝食を取れないわけです」 登美彦氏は同僚の鍵屋さんに言った。 「なんでですか?」 「得意の目玉焼きを作ろうにも、食器がない」 「買えばいいじゃないですか」 「いや、食器はあるんです。しかし使えない。ぜんぶ汚れて、流し台に積んである。だからそれを洗わないことには、そもそも目玉焼きを作ることができない。だから朝食がなかなかとれないことになる」 「ちゃっちゃと洗えばいいのに」 「