小谷野敦 聖路加国際病院理事長・日野原重明は、二〇一一年には一〇〇歳になる。私はこの人物について、特に何とも思っていなかった。二〇〇五年には文化勲章を受章しているが、文化勲章というのは歳をとると貰いやすくなるので、高齢をめでて受章したのだろう、くらいに思っていた。しかし、考えてみると、ノーベル賞をとったわけでもないし、いったい医学上どういう貢献があってのことなのか。これまで、医者で文化勲章をとったのは、三浦謹之助、黒川利雄、沖中重雄などがいるが、三浦は、大正天皇の診察をしたことで貰ったらしく、黒川、沖中には、それなりの病理学上の業績があり、いずれも日本学士院会員である。しかし日野原は学士院会員ではないし、これまた皇室の主治医だったために貰ったようである。 それだけでなく日野原は、一九八五年、つまり七十歳を過ぎてから出した『老いを創める』以下の、年々増え続ける一般向けの著作に人気がある、ない